最新記事

少数民族

中国の弾圧で人権を踏みにじられるウイグル女性たち 悲惨な虐待の実態と、必死の抵抗

UIGHUR WOMEN AT THE FORE

2021年4月13日(火)14時47分
シミナ・ミストレアヌ(フリーランスジャーナリスト)

中国政府は14年4月の鉄道駅爆発事件を受けて一段と弾圧を強め、17年には習近平(シー・チンピン)国家主席が新疆を囲む「鉄の長城」の建設を命じた。その命令を実行したのが、16年8月に自治区の共産党トップになった陳チェン・チュエングオ全国だ。収容所の建設を含め、弾圧の具体策を構じた張本人とされる。

ホジャは18年1月、収容所生活を生き延びたオムルベク・エリの証言とされるインタビューを初めて公表した。それまで疑念にすぎなかった中国政府のウイグル政策の実態が明らかになり、大きな転機となった。しかし、代償は大きかった。

インタビューが放送された日から、ホジャはウイグルにいる家族全員と連絡が取れなくなった。数日後、1本の電話がかかってきた。実家同士が近所で、今はアメリカに住むウイグル人学生(安全上の理由から匿名)からだった。「あなたのせいで、ご両親と親戚
20人以上が逮捕された。ご存じですか?」

「全てを失えば恐怖はない」

自分の仕事と、家族の命や安全のどちらを選ぶか。そういう精神的な重圧を感じたとホジャは言う。後に彼女は、RFAの同僚にも家族を連行された人がいて、それでも事態の悪化を恐れて黙っていた人がいることを知った。しかし彼女には沈黙という選択肢はなかった。「全てを失えば恐怖はなくなる」とホジャ。「だから思った。いいわ、私は自分の話を語るだけだと」

ホジャは、家族の救済のために奔走し始めた。18年7月には米議会で証言した。すると、同じような状況に置かれているウイグル人も次々と告発を始めた。それからしばらくして、ホジャの元には親戚の解放の知らせが届き始めた。今では母親とも話をすることを許されているが、母親はホジャから電話があるたびに地元の警察当局に報告しなければならないという。昨年5月、ホジャは国際女性メディア財団から「勇気ある報道賞」を受賞している。

ホジャに協力を求めたアスカルも報われた。消息不明になった家族についての話を複数の海外メディアが報じると、親族の1人がウィーチャットで連絡を取ってきた。

「入院している子たちのことで、よい知らせはある?」とアスカルは尋ねた。「入院している子たち」は、収容所に入れられた人を指す合言葉だ。アスカルはこのとき、甥の1人が解放されたことを知った。兄も数カ月後に解放されたが、甥のエクラムと義兄は今も収容されたままだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の

ビジネス

米、両面型太陽光パネル輸入関税免除を終了 国内産業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中