最新記事

女性問題

世界の経済政策リーダーに女性続々 コロナ禍克服へ新風

2021年4月10日(土)11時18分

米国心理学会の研究によると、米国では女性知事の州が新型コロナウイルスによる死者数が男性知事の州よりも少なかった。またハーバード・ビジネス・レビューによると、昨年3月から6月に6万人の指導者を対象に実施した360度評価で、女性の方が大幅に高い得点を得た。

IMFの調査によると、金融機関の最高経営責任者(CEO)の女性比率は2%未満で、執行役員会メンバーに占める比率は20%未満だが、女性が経営している金融機関は財務の耐性と安定性がずっと優れていた。

国際連合の顧問で非営利団体幹部のエリック・ルコント氏によると、イエレン氏がキリスト教やユダヤ教の団体の指導者と先月行った会談は、従来とはっきりと違っていたという。

「財務長官とこの20年間会談してきたが、彼らの論点はそれぞれ完全に異なっていた。イエレン氏は話し合ったすべての分野で共感を強調し、最も弱い立場のコミュニティーに政策が与える影響を重視した」と言う。

男性の前任者たちは「確実な事実のみ」に基づくアプローチを取り、最初に「人々ではなく数字」に焦点を当て、「弱者」といった言葉を使うことは一切なかったと言う。

「リセッション」でなく「シーセッション」

女性指導者の持つ意味は大きい。

エコノミストの多くは、新型コロナ流行による世界的な景気後退(recession)は実際には「シーセッション(she-session)」だと指摘している。コロナ禍で大きな影響を受けたのは女性だからだ。

マッキンゼーの最近の調査によると、女性は世界の労働力に占める割合が39%だが、失われた雇用に占める比率は54%だった。米国ではコロナ危機で消えた1000万の雇用の半分以上が女性で、労働市場から退出した女性は合わせて200万人を超える。

IMFの試算によると、このような女性が復職した場合の国内総生産(GDP)の押し上げ効果は米国で5%、日本で9%、アラブ首長国連邦(UAE)で12%となり、インドでは27%にも達する。

ゲオルギエワ氏は6日、IMFは医療、教育、社会保障、女性の権利促進など、これまで無視されてきた課題に各国が重点的に復興資金を充てるよう、量的な目標を設けたと説明。「そうしなければ不公平が悪化する恐れがある」と述べた。

世界銀行の首席エコノミスト、カーメン・ラインハート氏はロイターの取材で、女性指導者の増加が、「コロナが残す非常に多くの課題において、本当の意味でよりインクルーシブな(一体となった)対応につながる」と述べた。

有色人種女性初のUSTR代表となったタイ氏はスタッフに対して、「既存の枠から出て」、多様性を取り入れ、長い間ないがしろにされてきたコミュニティーと対話するよう呼びかけた。

アフリカ出身者として初めてWTOのトップに就いたオコンジョイウェアラ氏は、女性の必要性に対処することは、各国政府や国際機関における深刻な信頼失墜の立て直しに向けた重要な一歩だと指摘。「これまで通りのやり方に埋没してはいけない。重要なのは人間であり、インクルーシビティ(誰もが参加できること)であり、普通の人々がまともな職に就けることだ」と述べた。

(Andrea Shalal記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中