最新記事

米中関係

台湾・尖閣・南シナ海「トラブルメーカー」中国の野望をどう止める

COUNTERING CHINA IN ASIA

2021年3月24日(水)07時20分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

magSR20210324counteringchina-2.jpg

左からオースティン国防長官、ブリンケン国務長官、菅義偉首相、茂木外相、岸防衛相(3月16日、東京) EUGENE HOSHIKO-POOL-REUTERS

海上交通は中国経済の命綱

2プラス2の背景には、中国の軍事大国化に対する警戒感もあった。日本や韓国などアジアにおけるアメリカの同盟国はコロナ禍対策のために国防費を抑えざるを得ない。

片や感染拡大を早期に抑え込んだ中国は今年3月、前年比6.8%増の国防費を計上した。今や中国海軍の保有する戦闘艦艇は360隻。米海軍の保有数を60隻上回る。

「艦艇数で劣るため、アメリカはかつてのように中国に歯止めをかけられない」と、NBA選手の例えを出した米高官は言う。「アメリカの抑止力が効かず、中国が尖閣諸島を日本から奪って、海警局を常駐させるようになれば、中国が目指す新常態がどんどん既成事実化するだろう」

一方で、中国が海軍力を増強し、地域の盟主を目指すのは、経済的な動機からだと、専門家は指摘する。1990年代初めに石油の純輸入国となって以来、中国がひたすら恐れてきたのは、第2次大戦中に日本の息の根を止めたような海上封鎖だ。

「台湾をめぐる問題のように大規模な紛争が発生した際に、自分たちの経済が世界から遮断されるという中国の不安は、非常に現実的かつ当然のものだ。中国経済の供給は、ほぼ全て海上を経由している」と、元海軍士官で現在は新米国安全保障センター非常勤シニアフェローのトーマス・シュガートは言う。

「海上交通路を確保できる海軍力を構築するという中国の行動は、理性的な国家なら当然のものだろう」

中国は、アメリカの空母を射程に捉えるミサイルなど新しい攻撃手段を誇示するが、現実の戦闘能力には疑問が残る。

最近、近代化されたものの、中国の軍隊は79年を最後に本格的な戦闘はなく、ロシアとの長期的な同盟関係を避けながら共同演習で経験を積まなければならないと、米国防当局の高官はみる。

フィリップ・デービッドソン米インド太平洋軍司令官は3月上旬に上院軍事委員会の公聴会で、中国は野心を加速させており、台湾を支配しようという動きは今後6年以内に明白になるのではないかと述べた。

一方でオースティンは、中国が侵略した場合のタイムラインについて質問されても、口を閉ざしたままだった。

中国の領土的野心は、バイデン政権にとって頭痛のタネだ。東南アジアではベトナムとフィリピンが南シナ海における中国の領有権主張に異議を唱えており、米政府も過剰な主張と見なしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P横ばい、インフレ指標や企業決算

ワールド

米、ガザ「大量虐殺」と見なさず ラファ侵攻は誤り=

ワールド

トルコ・ギリシャ首脳が会談、ハマス巡る見解は不一致

ワールド

ロシア軍、北東部ハリコフで地上攻勢強化 戦線拡大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子高齢化、死ぬまで働く中国農村の高齢者たち

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 7

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    あの伝説も、その語源も...事実疑わしき知識を得意げ…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中