最新記事

恐竜

肉食恐竜が、大型と小型なのはなぜ? 理由が明らかに

2021年3月3日(水)19時00分
松岡由希子

中型の肉食恐竜が存在しなかった理由が明らかに Schroeder-Scienc

<米ニューメキシコ大学ほかの研究チームは、中型の肉食恐竜が存在しなかった理由についての研究成果を発表した......>

恐竜は、哺乳類や鳥類に比べて種が圧倒的に少なく、既知種数は1500種程度だ。哺乳類の種は大型よりも小型のほうが多い一方、恐竜は大型種のほうが多い。

また、肉食動物は、体重4キロのオオミミギツネのような小型から体重190キロに達する大型のライオンまで、様々な大きさの種が存在するが、肉食恐竜は、大型と小型に二極化され、100〜1000キロの中型の種が極めて少ない。

この理由について「大型肉食恐竜は、ネコくらいのサイズで生まれ、10年以上かけて1トン超の大きさにまで成長する過程において、狩猟形態や獲物が変化する。これによって、生態系内で共存できる種が制限されたのではないか」との仮説が示されている。

大型肉食恐竜の子どもが、中型肉食恐竜の大きさと一致する

米ニューメキシコ大学とネブラスカ大学の研究チームは、この仮説を裏付ける研究成果を、2021年2月26日、学術雑誌「サイエンス」で発表した。

研究チームは、550種以上の恐竜を含む世界43カ所の化石発掘地のデータを「古生物データベース」から抽出。エリアごとに恐竜を食性と大きさで分類し、小型・中型・大型の種の数を調べた。

その結果、大型肉食恐竜がいた生態系では、100〜1000キロの中型肉食恐竜がほとんどみられなかった。研究論文の筆頭著者でニューメキシコ大学の修士課程に在籍するカトリン・シュローダー氏は「大型肉食恐竜の未成体(成体になる前の子ども)が中型肉食恐竜の大きさと一致する」と指摘する

また、恐竜の種の多様性は、時代によっても異なっていた。1億4500万〜2億年前のジュラ紀では、中型の種の数と小型・大型との差が小さかった一方、ティラノサウルスやアベリサウルスなどの大型肉食恐竜が繁栄した6500万〜1億4500万年前の白亜紀では、その差が大きかった。

さらに研究チームは、子の成長率と孵化した幼生恐竜の生存率を組み合わせ、大型肉食恐竜のバイオマス(生物量)に占める未成体の割合を推定し、未成体の大型肉食恐竜が中型肉食恐竜の種の数に影響をもたらしていることを示した。

「ティーンエイジャーで満員」、ほかの種が利用できる余地がない

研究論文の共同著者でネブラスカ大学のキャサリーン・リオン准教授は「そのサイズの恐竜が利用可能なエネルギーの50%以上を未成体の大型肉食恐竜が消費し、他の種が利用できるエネルギーがほとんど残されていなかった」と解説

シュローダー氏は、この状況を「週末、若者でごった返すショッピングモールのようだ。ティーンエイジャーで満員」とたとえている。一連の研究成果は、肉食恐竜にまつわる長年の謎の解明に役立つのみならず、恐竜の研究における生態学的観点の意義を示すものとしても評価されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

シンガポール航空機、乱気流で緊急着陸 乗客1人死亡

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中