最新記事

教育

成績不良が非行に繋がる割合は、70年代より今のほうが高い

2021年3月18日(木)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
勉強中の中学生

少子化で、親や周囲からの期待圧力も高い taka4332/iStock.

<大学進学率が過半数を超えた現在の日本は、学業不振と非行の因果関係が昔より強くなっている>

未成年者による法の侵犯行為は非行と言うが、それが起きる過程は3つに分けられる。①生活態度が不安定化する過程、②非行を誘発しそうな環境に遭遇する過程、③行為が非行として当局に認知される過程、だ。少年を非行に押しやる過程(push)、非行に引き込む過程(pull)、行為が事件化する過程(recognize)、と言い換えてもいい。

非行防止の上で特に注意しないといけないのは、最初のプッシュ過程だ。思春期にもなれば子どもの心は激動を繰り返し、いつだって不安定なものだが、その浮動を規定する要因は何だろう。答えは無数にあるが、主なものとして学業成績がある。

「成績不振→非行」という因果経路は、誰もがピンとくるだろう。学歴社会の日本ではなおのことだ。学校での成績が振るわないことは、否定的な自我の形成や将来展望閉塞をもたらし、当人を非行へと傾斜させる要因となり得る。いつの時代でもそうだが、近年になって両者の関連が強まっているのではないか。

内閣府の『非行原因に関する総合的研究調査』(2010年3月)では、一般少年と非行少年に、クラス内での成績がどの辺りかを自己評定させている。非行少年とは、刑法犯・特別法犯で検挙・補導された12歳以上の少年を言う。中学生の男子を取り出し、両群の成績分布の時系列変化を対比すると<図1>のようになる。

data210318-chart01.png

一般少年は30年あまりでほとんど変わっていないが、非行少年では成績不良者が明らかに増えてきている。「悪い方」の割合は1977年では47.9%だったが、2009年では8割近くに達している。両群の成績分布の乖離は、学業成績が振るわない者から非行少年が出やすくなっていることを示唆する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米大統領選資金集め、4月はトランプ氏が初めてバイデ

ビジネス

英GSK「ザンタック」、発がんリスク40年隠ぺいと

ビジネス

アストラゼネカ、シンガポールに15億ドルで抗がん剤

ビジネス

BMW、禁止対象中国業者の部品搭載した8000台を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 8

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中