最新記事

進化

恐竜のお尻の穴(総排出腔)が初めて解明される

2021年1月25日(月)18時30分
松岡由希子

はじめて解明された恐竜のお尻の穴...... Bob Nicholls/Paleocreations.com 2020

<これまで恐竜のお尻の穴(総排出腔)は謎だったのだが、はじめて解剖学的構造が解明された...... >

総排出腔とは、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の一部にみられる、消化管の末端と排尿口、生殖口を兼ねた器官だ。このほど、恐竜の総排出腔の解剖学的構造が初めて解明され、その研究成果が2021年1月19日、学術雑誌「カレントバイオロジー」で発表されている。

ワニや鳥類と類似する機能がいくつか見つかった

今回の調査に用いられたプシッタコサウルスは、中生代白亜紀に生息した体長1〜2メートルの草食恐竜で、オウムのような嘴を持つのが特徴だ。英ブリストル大学のヤコブ・ウィンテル博士は、中国・遼寧省の白亜紀初期の遺跡から発掘され、独フランクフルトのゼンケンベルク自然博物館で所蔵されていたプシッタコサウルスの化石を用い、2016年にプシッタコサウルスの体色を復元した際、この化石に残された総排出腔の保存状態が良好であることに気がついた。

Psittacosaurus-Specimen-777x609.jpg

Credit: Jakob Vinther, University of Bristol and Bob Nicholls/Paleocreations.com 2020

そこで、ウィンテル博士らの研究チームは、この化石の総排出腔を詳しく観察した。なお、この化石に総排出腔の内部構造は保存されておらず、このプシッタコサウルスの性別は不明だ。

プシッタコサウルスの総排出腔の外部構造を陸上で生息する現生動物と比較したところ、ワニや鳥類と類似する機能がいくつか見つかった。たとえば、プシッタコサウルスの総排出腔には、鳥類のオスが繁殖期に精子を貯蔵する隆起部と似た領域がある。このことから、プシッタコサウルスにも鳥類と同様の機能が存在した可能性がある。

matuoka202101254.jpeg

また、総排出腔の両側には、ワニにみられるような側唇がある。ただし、ワニの側唇は縦に並んでいるのに対し、プシッタコサウルスではV字型になっている。このことから、プシッタコサウルスの総排出腔はスリット状に開口していた可能性がある。

Psittacosaurus-Reconstruction-Cloacal-Vent-777x966.jpg

Credit: Jakob Vinther, University of Bristol and Bob Nicholls/Paleocreations.com 2020

総排出腔の外縁に、メラニン色素の沈着

総排出腔の外縁には、ワニと同様に、メラニン色素の沈着がみられたことに、研究者は注目している。この色素沈着が、生きているヒヒなどと同様に、アピールするための信号伝達の機能を持っていたのではないかと考える。この領域は、ワニが求愛行動する際に匂いのある分泌液を産生する臭腺の役割を担っている。研究チームでは、プシッタコサウルスにも色素沈着した領域に臭腺があるのではないかと考察している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

シンガポール航空機、乱気流で緊急着陸 乗客1人死亡

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中