最新記事

台湾

台湾外相が豪に支援要請、中国の侵攻回避で

Taiwan Calls on Australia to Help Prevent China War

2020年12月2日(水)16時55分
ジョン・フェン

台湾の防空識別圏に侵入した中国の軍用輸送機Y-8(2020年11月) TAIWAN MINISTRY OF NATIONAL DEFENSE

<フェイク画像をめぐり中国とますます険悪になったオーストラリアに、台湾外相が台湾防衛への協力を要請>

オーストラリア軍の兵士がアフガニスタンの子供を殺そうとしている偽画像を中国政府の報道官がツイッターに投稿した事件で豪中関係が一段と悪化するなか、台湾外相はオーストラリア政府に中国の台湾侵攻を抑止するための支援を呼びかけた。

台湾の呉釗燮(ウー・シエチャオ)外交部長は、オーストラリアのテレビ局ABCのニュース番組「ザ・ワールド」に出演、台湾海峡での軍事衝突が起こるリスクは「以前よりもはるかに高まっている」と語った。

台湾と中国本土を隔てる約160キロの海域における中国の軍用機と船舶の活動はここ数カ月、急激に活発化している。台湾政府は、中国が軍事力で台湾を再統一しようとすることを「非常に懸念している」という。

12月1日に放映されたこの独占インタビューで呉は、11月に中国人民解放軍海軍が行った2回の大規模な上陸訓練をはじめ、台湾周辺で急増している中国の軍事活動の「圧力を感じている」と述べた。

戦火はアジア太平洋に波及

中国空軍の軍用機は、毎日のように台湾海峡の中間線を越え、台湾の防空識別圏への侵入している。アメリカはこれに対抗して11月、中国の領空を侵犯したとも報じられているほどだ。

呉外交部長は、中国政府が今年の夏、香港で国家安全維持法を施行したこと、東シナ海と南シナ海における紛争海域で軍事力による勢力拡大を進めていることを指摘し、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、中国を「これまで以上に独裁的」な国にしていると述べた。

「中国側はまさに臨戦態勢であり、中国が台湾に対して軍事攻撃を開始する現実的な脅威を真剣に憂慮する」と、呉は番組で語った。

台湾政府は、台湾と中国の軍事紛争はアジア太平洋地域に広く波及する可能性があると考え、準備をしている、と呉は言う。

台湾は中国政府に「攻撃に踏み切る口実」を与えないよう、節度と責任をもって行動しようとしていると彼は主張した。しかし、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる台湾政府は、8月と9月にアメリカの閣僚級政府当局者の公式訪問を初めて受け入れ、また2017年以降、トランプ政権下で米国務省と10件以上の武器取引を行っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中