最新記事

東南アジア

フィリピン滞在のサウジアラビア人男性逮捕 中東ISメンバーの入国を支援

2020年12月21日(月)17時56分
大塚智彦

アジアのIS系テロ組織が拠点としたフィリピン・ミンダナオ島のマラウィで。REUTERS/Eloisa Lopez

<中東=東南アジアを結ぶキーパースン逮捕でテロ勢力弱体化へ>

フィリピン国家警察犯罪捜査局が12月初旬にフィリピンに滞在しているサウジアラビア国籍の男性をテロ関連容疑で逮捕していたことが明らかになった。

この男性容疑者は、中東のテロ組織「イスラム国(IS)」と密接な関係があるIS東アジア組織の支援者として、中東からフィリピンに不法に渡航してくるIS関係者などの入国を支援していた疑いがもたれているという。

国家警察は12月9日、フィリピン南部ミンダナオ島コタバト市の自宅にいたサウジアラビア国籍のアデル・スレイマン・アルシュヒバニ容疑者(47)と一緒にいたフィリピン人妻ノルハヤ・シロンガン・ルマンガル容疑者(36)を逮捕した。

治安当局ではアルシュヒバニ容疑者は、サウジアラビアを本拠地としてイラクやシリアなどを活動拠点とするISの東アジア支部ともいうべき「ISEA」のフィリピンでの強力な支援者で、ミンダナオ島にあるISと関係が深いとされるフィリピンのイスラム系武装組織「バンサロモ・イスラム自由戦士(BIFF)」の指導者アブ・トゥライフェ容疑者と非常に近い関係にあると治安当局はみている。

警察は逮捕の際に実施した家宅捜索でアルシュヒバニ容疑者が所持していた複数のパスポートと共にサウジアラビア政府内務省発行の身分証明書、フィリピン滞在に関する書類などを押収。さらに自宅からは「手製爆弾とその関連部品」などの武器も発見、押収したとしている。

IS中東とフィリピンを繋ぐ役割?

これまでの捜査からフィリピン治安当局ではアルシュヒバニ容疑者はフィリピン人女性と結婚して正規の滞在者を装いながら、中東でISが壊滅状態に追い込まれて東南アジアなどに新たな活動拠点を求めて渡ってくるISメンバー、さらにマレーシアやインドネシア、フィリピンからISに参加するために中東に渡航したものの、母国への帰還の道が閉ざされて行き所を失っている東南アジア系のISメンバー、支援者などをフィリピンに受け入れるために活動していたとの疑いがもたれているという。

インドネシアやマレーシア国籍のIS関係者は、それぞれの国への直接的帰国が困難でもフィリピン南部経由で警戒網が比較的緩やかとされる海路を利用してボルネオ島(インドネシア名カリマンタン島)などに密入国するルートの存在が指摘されていることから「とりあえずフィリピンへ向かう」ための手助けをアルシュヒバニ容疑者が担当していた可能性もあるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中