最新記事

動物

猫カフェに「子猫2匹捨てた」飼い主 ペット飼う資格「ある人・ない人」の決定的差

2020年11月7日(土)14時40分
阪根 美果(ペットジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

「保護猫カフェ」は保護するカフェではない

猫カフェの前に置き去りにするという今回のような行為は、どんな罪に問われるのでしょうか。2020年6月に施行の「改正動物愛護管理法」では、「愛護動物を遺棄した者は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」と定められています。

「遺棄」とは捨てて置き去りにすることを意味し、それはもちろん犯罪です。保護猫カフェということで、「保護してくれるのではないか」と勘違いをしている人も多いようですが、猫カフェとは「室内に猫を放し飼いにし、猫とふれあう時間を提供する業態の喫茶店」のことを指します。

今回の場合、そこにいる猫がすべて保護された猫ということであり、「保護猫カフェ」とされています。里親募集型なので、ご縁があればそこにいる猫を譲ることはあっても、決して捨て猫を保護することを第1の目的とした施設ではないわけです。

newsweek_20201106_121617.jpg

「愛護動物を遺棄した者は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」と定められている(写真はイメージ)。lesichkadesign - iStockphoto


数年前、筆者の家の玄関前にも5匹の子猫が入ったキャリーバッグが置き去りにされていたことがありました。

ご丁寧に「ペットに関わるお仕事をされている方と聞きました。飼い猫が子猫をたくさん産んでしまったのですが、すでに4匹の猫がいて全部は飼えません。大変心苦しいのですが、どうかこの子たちをよろしくお願いします」という内容の手紙が添えられていました。一見すると愛情が込められた手紙のように見えます。

しかしながら、子猫たちが置かれていた場所は雨風がしのげる軒下ではなく、もし天候が悪くなっていたら、その命が危険にさらされていたかもしれません。もちろん、そのような飼育状況で飼い猫に避妊手術をしないことや、産まれた子猫を他人に押し付ける行為も褒められたものではありません。手紙が添えられていても、悲しい気持ちしか残りませんでした。

飼い主になることの「責任」とは?

猫カフェに子猫を置き去りにした女性にどんな事情があったのかはわかりません。けれど筆者の家の前に子猫を置き去りにした人と同様に、安易に飼うことが、安易に捨てることにつながるのだと感じています。これはコロナ禍での需要の拡大で危惧されている点でもあります。

2013年施行の改正動物愛護管理法において、「飼育している動物が、その寿命を迎えるまで適切に飼育すること」という飼い主に対する終生飼養の努力義務が明文化されました。

しかしながら、大切に愛情をかけて飼う人がいる一方で、飼ってみたら「言うことを聞かない」「手がかかりすぎる」「鳴き声がうるさい」などの理由で、保健所や動物愛護センターなどに引き取りを求めたり、前述したように捨てたりするケースが後を絶ちません。

犬や猫などのペットは飼い主を選ぶことはできず、その飼い主により幸か不幸かが決まります。だからこそ飼う前に、十分に時間をかけて「飼い主になる」ということを真面目に考えることが求められます。

たとえ終生飼養を覚悟して飼ったとしても、予期せぬことは起こります。もし、飼うことができなくなったときには、どんな状況であっても「命をつなぐ」という努力をすることが飼い主の責任ではないでしょうか。

「猫たちの幸せのために、また、自分自身のためにも、捨てるという選択をする前に相談をしてほしい」と前述の今村さんは心から願っているそうです。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インドネシア、追加利上げ不要 為替相場は安定=中銀

ビジネス

原油先物は上昇、米原油在庫減少やFRBの利下げ観測

ワールド

独首相、ウクライナ大統領と電話会談 平和サミット支

ビジネス

円安で基調物価上振れ続けば正常化ペース「速まる」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中