最新記事

2020米大統領選

バイデン勝利にラティーノ票の不安 民主党がハートをつかみきれない訳

THE FIGHT FOR THE LATINO VOTE

2020年10月16日(金)17時15分
エイドリアン・カラスキーヨ(本誌政治担当記者)

バイデン陣営の熱心な運動員であるルーベン・ガイエゴ下院議員(アリゾナ州)に言わせると、若い世代を含めてラティーノがこれほど盛り上がっているのは前例がない。新型コロナウイルスのせいで予備選の終盤はまともな選挙運動ができなかったが、今は違うとガイエゴは思う。「アリゾナにもフロリダにも潤沢な資金が投入されている」

バイデン陣営は若者にアピールするため、プエルトリコ出身の人気ラッパー、バッド・バニーの曲を反トランプ広告に使った。タイトルは「しかし、もはやノー」。4年前にトランプを支持した層に向けて、民主党に戻ってこいと呼び掛けるメッセージだ。トランプ陣営もバッド・バニーの別の曲「ハロー、俺は誰?」でバイデンの地味さを皮肉ったが、これは空振り。バッド・バニーのファンは徹底したアンチ・トランプだ。

「彼の歌はLGBTQ(同性愛など性的少数者)の権利を擁護し、政治家の腐敗と戦うよう訴えている」と、バイデン陣営でスペイン語の広告を仕切っているジョエル・メイソネットは言う。「だからバイデンとの組み合わせは、意外に見えても実は合理的だ」

各種の世論調査によると、投票先未定の有権者は4年前より少ないようだが、バイデン陣営は中南米系の浮動票獲得に自信を見せる。バイデン陣営の事情通に言わせれば「選挙の常、そして中南米系の人たちの常として、みんな土壇場にならないと動かない」のだ。

7月末には、選挙のプロであるエイドリアン・サエンスが陣営に加わった。オバマの選挙にも協力し、フロリダやニューメキシコ、テキサスで多くの選挙を手掛けてきた人物で、「ラティーノ有権者の多様性も機微も理解している」とされる。

選挙戦が最終盤に差し掛かった今の時点で、ラティーノ票の掘り起こしに巨費を投じるのはなぜか。有権者のデータを少しでも多く入手したいからだ。そうすれば性別や出身国、年齢などで対象を絞り込み、ネットを通じて適切なメッセージを送り込める。

「これからだ」と、バイデン陣営のある幹部は言った。「映画の予告編も、2年前から流したりしない。封切りの直前が本当の勝負だ」

<2020年10月20日号掲載>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高

ワールド

イスラエルとの貿易全面停止、トルコ ガザの人道状況

ワールド

アングル:1ドルショップに光と陰、犯罪化回避へ米で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中