最新記事

感染症

新型コロナは「中国病」どころかアメリカ病だ

U.S. Imported Over 30,000 Bat Body Parts From China in Five Years

2020年9月30日(水)17時10分
アリストス・ジョージャウ

動物を野生から引き離し、市場で他の野生動物と一緒にしたりすれば、新型コロナのようなウイルスが生まれる絶好の条件が整う(写真は豪原産のメガネオオコウモリ) Connie Kerr/iStock.

<人獣共通ウイルスの宿主として知られるコウモリや齧歯類を中国から大量に輸入しているのはアメリカだ。それも多くの場合、装飾用などくだらない目的のために野生動物が売買されている>

アメリカは2010年から2014年にかけて、少なくとも3万個体分に相当するコウモリやその身体の一部を中国から輸入した。自然保護に取り組む非営利団体、生物多様性センター(CBD)が本誌に対して明らかにした。

CBDは、米魚類野生生物局(FWS)のデータを分析した調査報告書のなかで、「きわめて大規模な」野生生物売買の実態を明らかにし、そうした売買が世界規模のパンデミックのリスクを高めていると指摘している。

この報告書では、データが入手可能な直近の5年間にあたる2010年から2014年にかけて、アメリカが全部で2300万点近いコウモリ、霊長類、齧歯類、それらの身体の一部、標本、およびそうした動物からつくられた製品を輸入したことが明らかにされている。

この期間にアメリカは、全世界から9万6000点を超えるコウモリおよびその一部を輸入した。これには、生体と死体、骨格、頭骨のほか、宝飾品や食肉、皮、狩猟の賞品として販売されたものが含まれる。

報告書によれば、輸入コウモリの半数以上は科学研究を目的としたものだが、「商品としての用途」が僅差の2位につけ、そのあとに生物医学研究の用途が続く。商用のほとんどは、死骸、骨格、頭骨として輸入されており、大多数は、アクリル樹脂ブロックに封入されたペーパーウェイトなどの「装飾」品として売られている。

「こうした商品は、教育用品、スチームパンク/ゴス風の装飾物、一般的な骨董品として販売されており、アマゾンやイーベイ、無名のオンラインストアに至るあらゆる場所のほか、展示会やその他の国内販売業者を通じて消費者に売られている」と、報告書にはある。

ウイルスの有名宿主ばかり

アメリカは同時期に、200万点を超える霊長類と2070万点を超える齧歯類も輸入した。

齧歯類、コウモリ、霊長類は、現在知られている世界の人獣共通ウイルス(動物から人間に伝染する病原体)の75%の宿主だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む最近の感染症の多くは、コウモリが発生源になった可能性がある。

CBDによれば、これらの野生動物の売買は、新たな人獣共通感染症が発生する絶好の条件を生み出しているという。

「こうした輸入品に対するアメリカの飽くなき欲求は、野生動物を絶滅させ、感染症を生み出している」。CBDの国際法務責任者で報告書の著者でもあるターニャ・サネリブはそう述べる。「コウモリ、霊長類、齧歯類はすばらしい動物だが、自然界では病気を宿している。人間がそうした動物たちを売買したり生息環境を破壊するかたちで搾取すると、その動物の病気が人間に感染する場合がある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中