最新記事

コミック

映画では描かれなかったダース・ベイダーの心の傷

A Traumatized Darth Vader

2020年2月13日(木)18時15分
アンドルー・ウェーレン

コミックは映画のその後を掘り下げ、ダース・ベイダーの感情を描く Marvel and StarWars.com

<息子ルークとの決闘で背負った葛藤と、過去のトラウマが新シリーズで明らかに>

マーベル・コミックス社がコミック本シリーズ「スター・ウォーズ:ダース・ベイダー」を最初に発表したのは2015年2月。映画の第1作『エピソード4/新たなる希望』(1977年)と『エピソード5/帝国の逆襲』(80年)の間に、ダース・ベイダーの身に起きたことを描いたシリーズだ。

同シリーズは全25巻で完結。その後さらに、アナキン・スカイウォーカーがダークサイドに落ちてダース・ベイダーとなった『エピソード3/シスの復讐』(05年)の直後から始まる、同じく全25巻のシリーズ2が発表された。

そして2月5日、同シリーズが再び帰ってくる。今回明かされるのは、『エピソード5』後から『エピソード6/ジェダイの帰還』(83年)が始まるまでのダース・ベイダーの物語。第1巻の発売に先立ち、スター・ウォーズ公式サイトに7ページのプレビューが掲載された。

新シリーズ第1巻では、クラウド・シティで息子のルーク・スカイウォーカーと対決したベイダーが故郷の惑星タトゥイーンを訪れたことが明かされる。浮き彫りになるのは、マスクの下で揺れ動くベイダーの感情だ。妻パドメ・アミダラを亡くしたことと、「親子で銀河支配を」との誘いを拒まれ実の息子を失ったことを、ベイダーが結び付けて考えていることが描かれる。

ダークサイドに落ちるきっかけ

プレビューは、ベイダーがルークの故郷である水分農場の焼け跡に降り立つ場面から始まる。ドロイドはベイダーに、かつてアナキン(ベイダー)の母と、その夫でベイダーの義父クリーグ・ラーズが所有していた家の中を案内。その親族オーウェン・ラーズ夫妻がルークを養子にしたことに関する記録が、ほとんど残っていないと説明する。

ルークの部屋を探索するうち、ベイダーに自らの幼少期の記憶がよみがえる。それに続いて、タスケンの虐殺の暗い記憶が彼を襲う。彼がダークサイドに落ちるきっかけの1つとなった悲惨な事件だ。

新シリーズ第1巻はベイダーの心の奥深くにあるトラウマを明らかにし、息子ルークとの対決が彼の感情にどのような影響を及ぼしたのかを探っていく。それは映画の中では描かれなかったベイダーの姿。映画では、彼がこれほどの葛藤に苦しんだのは、皇帝パルパティーンを裏切って死に至らしめたときだけだったことになっている。

コミック版はこれまでも、映画の出来事のその後を深く掘り下げることで、ベイダーの「感情」を描いてきた。新シリーズのプレビューは、彼にまだまだ隠された感情があることを示唆している。

『エピソード6』でルークは父に「あなたの心の中に葛藤を感じる。憎しみを外に追い出してください」と語り掛けた。コミックを読んだ後は、この言葉がまた新たな重みを持つことになりそうだ。

<本誌2020年2月4日号掲載>

20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国大手金融機関で大型リストラ相次ぐ、IPOやM&

ワールド

米、イスラエルへの兵器輸送を停止 ラファ侵攻阻止の

ワールド

英、次世代原子炉燃料HALEUの製造施設建設へ 欧

ワールド

中国がカナダの選挙に執拗に介入、情報機関が警告
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中