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森林火災が続くオーストラリア、干ばつの後は大雨で洪水になる恐れ

2020年1月8日(水)18時30分
松岡由希子

空からも救助活動がつづく ...... Nicole Dorrett/Australian Department of Defence/REUTERS

<森林火災が続くオーストラリアでは、干ばつが長期にわたる一方で、今度は広範囲で雨が激しく降り、洪水が発生する可能性が警告されている ......>

オーストラリアでは、南東部を中心に大規模な森林火災が続き、甚大な被害をもたらしている。最大都市シドニーを擁するニューサウスウェールズ州では、2020年1月3日、山火事に関する非常事態を宣言。8日時点で20名が死亡し、1687棟の家屋が焼失している。

オーストラリアは、暑く乾燥した夏季に森林火災が発生しやすい。特に2019年は年間降水量が観測史上最低を記録し、広範囲にわたって乾燥した状態が続いていた。オーストラリア気象庁の予報では、2月から4月にかけて平年並みに回復するとみられており、降雨も期待できるという。

干ばつの後、大雨が洪水をもたらすおそれがある

しかしながら、干ばつの後の大雨は洪水をもたらすおそれがあり、十分な注意が必要だ。干ばつの影響で土壌が露出して植生が不足し、森林火災により森林や草原が焼失すると、洪水リスクが高まる。北東部クイーンズランド州では、厳しい干ばつの後、2019年1月から2月にかけて雨が降り続き、記録的な洪水に見舞われた。

同様に、干ばつが続いていたインドネシアの首都ジャカルタでも、2019年12月末から2020年1月1日にわたる豪雨によって洪水や土砂崩れが発生している。

降水量が観測史上最低だったが、サイクロンが接近する兆候

オーストラリア北部では、雨期の開始が遅れており、2019年10月から12月までの降水量が観測史上最低を記録したが、近々、サイクロンが接近する兆候がみられる。

南部では、一部の地域ですでに厳しい熱波に見舞われているものの、そのピークはまだ1ヶ月先だ。干ばつが長期にわたる一方で、広範囲で雨が激しく降り、洪水が発生する可能性もある。

豪モナシュ大学のネヴィル・ニコルス教授によると「地球温暖化により季節予報が複雑となっているものの、天気予報の精度は上がっている」という。

オーストラリア気象庁では、公式ウェブサイトで天気予報を更新しているほか、ニューサウルウェールズ州地方消防局の「Fires Near Me」やビクトリア州の防災アプリ「VicEmergency」など、地方自治体でもインターネットやモバイル端末を活用した情報共有を積極的にすすめ、地域住民に注意を呼びかけている。

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