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アメリカ大陸最大のネコ科動物を脅かす水銀の霧

Toxic Fog Threatens California’s Mountain Lions

2019年11月28日(木)18時24分
ロージー・マッコール

今後ますます状況が悪化するのは確実だと、ウィルマーズは断言する。「火力発電で石炭がどんどん燃やされているので、大気中の水銀は増え続け、今から100年後にはさらに高い濃度になるだろう」

ワイスペンジアスとウィルマーズらは、沿岸部に生息するピューマ94頭と内陸部のピューマ18頭の体毛とヒゲに含まれる水銀の濃度を調べた。

沿岸部のピューマの水銀の濃度は平均約1500ppb(ppb は10億分の1)で、内陸部のピューマの平均500ppbと比べて3倍高かった。

ミンクやカワウソのような小型の哺乳類なら中毒症状が出てもおかしくないほどの高濃度のメチル水銀を蓄積しているピューマもいた。生殖機能が低下し、生存能力がある子を産めなくなるような濃度が確認された個体はもっと多くいた。厳しい生息環境に置かれているカリフォルニア州のピューマにとって、これは深刻な脅威だ。

一方、米生態学会の学術誌エコロジカル・アプリケーションズに今年掲載された論文によると、同じカリフォルニア州のサンタモニカとサンタアナ地域のピューマは人間の開発により孤立し、遺伝的多様性が減少しているため存続が危ぶまれ、今後50年以内に姿を消すおそれがある。

同論文によれば、ほかの地域のピューマと「比較的小規模な」交流があれば、最悪の事態は避けられるというのだが。

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