最新記事

シリア

トルコ軍、トランプが見捨てたクルド人勢力に地上攻撃を開始 駐留米軍は危機、IS捕虜は逃亡の可能性も

U.S.Forces Face Increased Danger in Syria.

2019年10月10日(木)19時30分
ジェームズ・ラポルタ

一方で国防総省も、トランプがマーク・エスパー国防長官にも、新たに統合参謀本部議長に就任したマーク・ミリー陸軍参謀総長にも相談せずに、独断で撤収を決めたという報道を否定している。

本誌は7日、トランプの撤収宣言は国防総省にとって「寝耳に水」だったと報じた。米国家安全保障会議の情報筋(トランプとエルドアンの電話会談の内容を直接的に知っている人物だ)によると、トランプは「優柔不断」で、エルドアンに「言い負かされ」、アメリカがメリットを受けたように取り繕って、シリア北部からの撤収をのんだという。

国防総省はそうした報道を強く否定する。

「事実に反する誤った報道が続いているが、エスパー長官とミリー参謀総長はここ数日、トルコの軍事行動を前に、シリア北部に駐留する米軍を守るべく大統領と協議を重ねてきた」と、国防総省のジョナサン・ホフマン報道官は8日の声明で述べた。

「最高司令官」失格

米陸軍士官学校の元助教で、複数の上院議員の顧問を務めたブラッドリー・ボーマンは8日、本誌の取材に応じ、撤収については現地の駐留部隊が真っ先に知るべきだったと語った。

「米軍の最高司令官(であるトランプ)が、最高司令官の役目を果たしていない」と、ボーマンは言う。「私の見るところ、それは国家安全保障プロセスがもはや破綻している証拠だ。米軍の将校は、こうした危険な地域に、武器を持った(クルド人の)戦闘員と共にいて、彼らが『おまえたちは敵か味方か』と疑い始めたときに、信頼をつなぎ止めなければならない。アメリカ人が身を置くには厳しすぎる状況だが、大統領はそれを少しでも楽にするどころか、窮地に陥れた」

ボーマンは現在、ワシントンのシンクタンク「民主主義防衛財団」傘下の軍事・政治力研究所の上級ディレクターを務めている。

「私もあなた方同様ニュースを追っているが、国防総省の大きな要素、米中央軍かもしれないし、シリアの駐留米軍かもしれないが、大統領のツイートに驚いたことを示唆する報道は多い。こういうことは今に始まった話ではない。ジョセフ・ボテル陸軍大将が議会で、駐留米軍の生死に直接的にかかわる可能性がある大統領の宣言について、自分は知らなかったと証言するのを私たちは目にしたはずだ」

シリア北部から撤収を始めた駐留米軍部隊
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中