最新記事

中東

トランプ、タンカー攻撃巡りイランを非難 中国・EUは自制呼び掛け

2019年6月15日(土)10時48分

6月14日、トランプ米大統領は中東のホルムズ海峡付近で日本のタンカーなど2隻が攻撃を受けたことについて、イラン政府を非難する一方、いつでもイランと対話する用意があるとの考えを示した。12日撮影(2019年 ロイター/KEVIN LAMARQUE)

トランプ米大統領は14日、ホルムズ海峡に近いオマーン沖で前日に発生した石油タンカー攻撃について、イランを非難した。イランは関与を否定しているが、原油輸送の要衝である同海域での緊張の高まりが懸念されている。

攻撃を受けたのはノルウェーのフロントラインが所有する「フロント・アルタイル」と、国華産業(東京都千代田区)が運航する「コクカ・カレイジャス」(船籍パナマ)で、米軍は13日、オマーン沖で攻撃を受けた日本の石油タンカーの側面からイラン革命防衛隊が不発機雷を取り除いている場面とする映像を公開。取り除く前の機雷とみられる写真も公開した。

トランプ大統領はこの日、フォックス・ニュースに対し「イランが関与した。(イランの)船舶が目撃されているため、そう判断できる」と指摘。中東でのタンカー攻撃は「イランの仕業に間違いない」とした上で「あちこちにイランの特徴がうかがえる」と述べた。こうした事態の再発防止に向けた措置に関する質問に対しては「様子を見たい」と述べるにとどめたものの、ホルムズ海峡の閉鎖に向けたいかなる動きも長続きしないと述べた。

ただ同時に、いつでもイランと対話する用意があるとの考えも表明。「イランには交渉の席に戻ってきてもらいたい。いつでも準備ができている」と語った。

イラン外務省のアッバス・ムサビ報道官は、イランはホルムズ海峡の安全維持において責任があり、オマーン湾でのタンカー攻撃を巡るイランへの非難について憂慮していると発言。米軍が公開した映像については、何も証明するものではないとし、「こうした非難は警戒を要する」と述べた。

国連のグテレス事務総長は前日、「湾岸地域での大きな対立」は看過できないとして強く非難。この日は今回の攻撃を巡る独立調査の実施を呼び掛けた。

この他、中国や欧州連合(EU)などは自制を呼び掛けた。中でもドイツは、米軍が公開した映像は誰が攻撃を行ったのか特定するには不十分との見解を表明。米国の同盟国の間で米国の姿勢に対する懸念が台頭しつつある。

今回の攻撃は安倍晋三首相のイラン訪問中に発生。安倍首相とトランプ大統領はこの日、電話会談を行い、タンカー攻撃への対応などを巡り協議した。米ホワイトハウスによると、トランプ大統領はイランとの対話に向けた安倍首相の尽力を感謝すると表明した。

前日は一時約4%上昇した北海ブレント先物は、この日は約1%高で清算。船舶保険会社によると、中東近辺の海域を航行する船舶の保険料は攻撃後、少なくとも10%上昇している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中