最新記事

宇宙ベンチャー

中国の宇宙ベンチャーが誇示した技術力の高さ 人工衛星からロケットの打ち上げ撮影

2018年9月14日(金)15時15分
鳥嶋真也

中国の宇宙ベンチャー企業・長光衛星技術有限公司の地球観測衛星「吉林一号」が撮影したロケットの打ち上げ (C) Chang Guang Satellite Technology Co., Ltd.

中国の宇宙ベンチャー企業・長光衛星技術有限公司は2018年9月7日、自社の人工衛星を使って、地上から打ち上げられたロケットを撮影することに成功した。さらにその数日後には国際宇宙ステーションを撮影することにも成功。衛星からロケットや他の衛星を撮影することは難しく、世界に高い技術を見せつけた。

技術力の高さが注目されていた長光衛星技術有限公司

長光衛星技術有限公司(以下、長光)は2014年に設立された企業で、32人の投資家や、中国科学アカデミー、吉林省政府などが資金を提供している。

同社は人工衛星やUAV(無人航空機)の開発や運用、そして撮影したデータの販売などを事業としており、2015年には初の衛星の打ち上げに成功。その後も続々と衛星を宇宙に送り、現在では10機もの衛星を運用している。

長光が技術開発の拠点を置く吉林省にちなみ、同社の衛星はすべて「吉林一号」という名前をもっている。それぞれは100〜200kg程度の小型衛星で、地球を南北に回る太陽同期軌道から、地球観測を行っている。

吉林一号は主に、約1mという高い分解能で、カラーの4K HD動画や静止画が撮影できる能力をもつ。また、分解能70cmという高い性能で地表を細かく撮像できる衛星や、技術試験衛星も打ち上げている。

さらに、10機もの衛星をもっていることから、地表のあらゆる地点を高い頻度で観測することもできる。

画像データは測量や交通、環境保護、農業、ビッグ・データなどの分野で活用されており、過去には行方不明になった、マレーシア航空370便の捜索などでも活躍。近年、雨後の筍のように乱立する中国の宇宙ベンチャーの中でも、同社はひときわ高い成果を残している。

ロケットの打ち上げの撮影に成功

長光の技術力の高さはかねてより注目されていたが、それを誰でもわかる形でアピールしたのが、9月7日に公開された動画だった。

この動画は宇宙を飛ぶ吉林一号から撮影されたもので、この日打ち上げられた、中国の別のベンチャー企業のロケットを、発射の瞬間からその後の飛行に至るまで克明に捉えたものだった。

事前に打ち上げ時刻や飛行方向などを知らされていたことは間違いないだろうし、またあとで動画処理も行われた可能性もあるが、それでも高速で飛ぶロケットを、それを大きく超える高速で宇宙を飛ぶ衛星から、ぶれずに、そして高解像度で撮影できたのは、カメラの性能もさることながら、吉林一号の姿勢制御能力(機体の姿勢を一定に保ったり、撮影する方向に向け続けたりする能力)も高いものと考えられる。

(C) Chang Guang Satellite Technology Co., Ltd.
今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中