最新記事

北欧

ノルウェーの極右ポピュリスト政党は政権の座を維持できるか

2017年5月13日(土)10時00分
鐙麻樹(ノルウェー在住ジャーナリスト&写真家)

北欧と言えば「環境政策に熱心な国」という綺麗なイメージが国際的には浸透しているが、ノルウェーは石油・ガス資源のおかげで成り立っている。それは同時に、「石油発掘=排出ガス増加=環境破壊を招く国内の最大要因」を意味する。「石油エネルギーからグリーンなエネルギーへシフト」という議論が以前から続いているが、現実と理想の距離は大きい。

進歩党には、「温暖化はそもそも人間が原因なのか」という温暖化懐疑論者が多く、「石油はこれからも、どんどん掘っていこう!」という政党だ。

frp_landsmote2017_asakiabumi-2356.jpg温暖化対策より渋滞解消を重視「さらに多くの道路を!」 Photo:Asaki Abumi

同時に、「車の運転手の味方」としても人気がある。通行料金やガソリン料金の減税などを提言。「車をオスロ中心部からなくそう」という「緑の環境党MDG」とはまさに両極にあり、互いを毛嫌いしている。

進歩党の支持率はある程度一定している。特に、シルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣は、移民や難民に厳しい言動で物議を醸す一方、5月8日の世論調査では国民の約半数の49%がその移民政策を支持した(Dagsavisen紙依頼によるIpsos調査)。

frp_landsmote2017_asakiabumi-2471.jpgノルウェーの国境の番人として、厳しい政策を打ち出すリストハウグ移民・社会統合大臣 Photo:Asaki Abumi

つまり、進歩党の次期党首候補であり、「党のプリンセス」といわれるリストハウグ大臣のポピュリスト政策が大きく支持されていることになる。同時に、45%は不支持を表明し、国論は二分している。

ポピュリスト政党が政権で影響力を持つとどうなるのだろう。

進歩党は与党となって以降、他党と連立し、政策の一部では妥協しなければならなくなった。有料道路の料金は上がり、国家公務員の数が約千人も増加したことなど、公約破りも大きく批判されている。「期待していたほどではなかった」と、がっかりした有権者が、他党に逃げる傾向もある。

責任ある与党という立場になることで、これまで過激だった発言はトーンダウンした。リストハウグ移民・社会統合大臣を除いて、他の進歩党閣僚たちの言動は明らかに以前より過激でなくなっている。もし、今年の選挙結果次第で野党となった場合は、遠慮のない「進歩党節」が復活するだろう。

他党から嫌がられる傾向にある進歩党だが、アーナ・ソールバルグ首相率いる連立相手の保守党は、進歩党との協力体制の継続を望んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中