最新記事

フランス政治

仏大統領選、中道マクロンの「右でも左でもない」苦悩

2017年4月24日(月)11時30分
ジョシュ・ロウ、クレール・トゥレーユ

マクロン(中央)が結成した中道グループには既成政党から転じた支持者も多い Regis Duvignau-REUTERS

<5月7日の決選投票はマクロンとルペンの対決に。変化と前進を掲げて大躍進した中道派のマクロン、気鋭のカリスマを待ち受ける「当選後」の洗礼とは>

今年2月、ロンドンの集会に登場した仏大統領選の中道・独立系候補エマニュエル・マクロンは、現地の3000人以上のフランス人から大歓声で迎えられた。マクロンはこわばった笑顔でぎこちなく手を振った。

39歳の小柄な政治家は、力強い視線が信念を感じさせる。変化を起こすという彼の誓いに、周囲は08年にバラク・オバマが最初の米大統領選に臨んだときを重ね合わせる。

「私の集会にブーイングとやじは要らない」と、彼は群衆に語り掛けた。「それは希望を持たない人のすることだ」

中道右派・共和党の有力支持者ながら、同党のフランソワ・フィヨン候補ではなくマクロンを支持する公共政策の専門家ジェローム・グランデノンは、フランスは何よりも変化を求めていると語る。「フランスのシステムは完全に行き詰まっている。人々は新しい顔を求めている」

昨年8月まで2年間、経済相を務めカリスマ性もあるマクロンだが、政界では比較的新顔だ。1年前に結成した政治グループ「前進!」は左派と右派それぞれの元支持者が集まり、双方の考えからえりすぐった綱領を掲げる。最新の世論調査によると、大統領選は5月に行われる決選投票で、マクロンが極右政党・国民戦線の党首マリーヌ・ルペンを破る見込みだ。

ただし、大統領に当選すれば安泰とはいかない。6月に行われる総選挙(国民議会選挙)で「前進!」は、左派では社会党、右派では共和党という既存の組織とそれぞれ戦わなければならないのだ。

【参考記事】フランス大統領選決選投票、ルペンは「手ごわく危険な対抗馬」

連立政権なら前途多難

仏大統領の権限の多くは首相の支持を必要とし、首相の任命は基本的に国民議会の同意を必要とする。グランデノンによると、マクロンもそこは分かっている。「議会で過半数を制して初めて、実際の力を手にする」

まだ若い「前進!」が明確なアイデンティティーを確立し、十分な選挙戦を展開して議会で過半数を獲得することができるだろうか。もしできなければマクロンはどの勢力を頼り、どのように政治基盤を築けばいいのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中