最新記事

台湾

「一つの中国」原則で米中に圧殺される台湾

2017年4月18日(火)11時00分
楊海英(本誌コラムニスト)

トランプにそのような思想的な戦略がどれほどあるのか、アジアの米同盟国も読み切れない。ひょっとしたら、ビジネスマンが得意とする交渉術だったのかもしれない。台湾をカードに、困難な対中折衝を有利に進めようとしているのではないか、と台湾は心配する。

トランプは国内で低迷する支持率を打開するかのように、中国への圧力を強めている。南シナ海における中国の覇権主義的行動、北朝鮮の核・ミサイル開発問題、為替操作や米中不均衡貿易の是正など、多くの懸案を解決しようとするかのようだ。

一方、中国では朝鮮戦争以来「鮮血で固められた北朝鮮との友情」は冷え切った。「金王朝の第3王子」だった金正恩(キム・ジョンウン)も国務委員長就任以来、忠臣ぶりを示さなくなっている。

【参考記事】中国空母が太平洋に──トランプ大統領の誕生と中国海軍の行動の活発化

また15年9月に習主催の抗日戦争勝利70周年軍事パレードを参観するなど、朝貢国家のような蜜月関係を築いた韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領も今や拘束の身。朝鮮半島の情勢は不透明感が増してきた。

中国経済も混沌とし、国有企業の改革は遅々として進んでいない。「世界は自由貿易の原則を守らなければならない」と、習はオバマ前米大統領をまねたかのような見栄えのいい演説を国際舞台で披露。だが経済の停滞で国内政治の舵取りも難しくなっている。

「台湾は中国の核心的利益だ」とする習のスローガンは、何よりも台湾の人々の利益と意思を否定している。トランプに自由主義陣営のリーダーの自覚が少しでもあるならば、台湾を中国に売り渡してはならない。

[2017年4月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中