最新記事

インタビュー

高松も東京も......まちの可能性は広がっていく

2017年2月24日(金)17時13分
WORKSIGHT

アートは誰にとっても「分からない」、だから人をつなぐ

シビックプライドは市民のマインドから生まれるものなので、自治体が一方的に強要することはできません。また、市民の中で自発的にシビックプライドが芽生えたとしても、場合によっては当事者間で利害が相反して鋭い対立になるかもしれない。そういう場合は行政や第三者が介入して合意形成が必要になるかもしれません。

市民の共感を高めつつ利害をあおらないということでは、アートは役立つテーマでしょう。アート・ディレクターの芹沢高志さんに話を伺ったとき、各地でアートプロジェクトが立ち上がってアーティストが呼ばれたりするのは、「アートが誰にとっても等しく『分からないもの』であるからだ」とおっしゃっていたのが印象的でした。

例えば道路を造ろうとなると激しい議論になりますが、アートは一般の住民にとっても、お店を開いている人にとっても、政治家にとっても同じように「分からないもの」であり、だからこそみんなをつなぎ合わせることができるのではないかということです。

また、芹沢さんは「アーティストというのは感度の高いラジオみたいなものだ」ともおっしゃっていました。地域の良い面も悪い面も、住民が見過ごしているようなところを増幅して作品に仕上げる。ある意味、問題起こし屋なんですね。問題解決屋じゃなくて(笑)。でもそういう視点があればこそ、新しいものが見出されることもあるということです。

ws_itokaori170224-sub.jpg

Photo: WORKSIGHT

企業の従業員は地域としても資産。協働でシビックプライドを高めていく


シビックプライドを育むにあたっては、地域の企業も大きな役割を果たします。地域は産業がないと成り立ちません。税金を納めることで地域の財政を支えているし、働く場所を提供することで雇用も生み出します。地域の価値づけの担い手でもあるわけです。

特に、働き方や生き方、住まい方の柔軟性が増している昨今では、いい働き方ができるところに人が集まってくる傾向があります。ですから企業には目先の利益だけでなく、従業員の働き方と住まい方の関係をどうとらえるか、そのあたりも視野に入れてほしいですね。

住宅はもちろんのこと、例えばお昼ご飯を食べる場所もそう。街に出て周辺の飲食店を利用してくれたほうがいいこともあるでしょうし、昼時にわっと人が繰り出されると困るところもあるでしょう。周辺地域の状況次第では、例えば自社ビルの1階をオープンカフェにして、地域の人も利用できれば街全体が潤うことになるかもしれません。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中