最新記事

2016米大統領選

トランプ、キューバ禁輸違反が発覚=カジノ建設を検討

2016年9月30日(金)16時00分
モリー・オトゥール

NEWSWEEK

<トランプのグループ企業が、米経済制裁下のキューバで違法な商取引を行っていたことが発覚。全米で200万人を超えるキューバ系の保守票を失うおそれも>

 共和党候補のドナルド・トランプが、1990年代に当時の経済制裁に違反してキューバで商取引を行っていたことが、報道で明らかになった。アメリカにはキューバの独裁政権に抗議してきたキューバ系の共和党支持者が約200万人いる。事実なら、トランプはこの票を失うかもしれない。

【参考記事】キューバ系アメリカ人を乗せない客船が象徴するカストロ抑圧体制

 ところがトランプ陣営の選対本部長ケリーアン・コンウェイは、今週出演したABCテレビの番組でこの事実をあっさり認めた。ニューズウィーク(写真)によると、トランプのグループ企業は1998年、前国家評議会議長フィデル・カストロ政権下のキューバで、カジノ進出についてのコンサルタント料として少なくとも6万8000ドルを支払っていた。アメリカが経済制裁を課していた当時、キューバでの米企業の商取引は違法だった。

【参考記事】キューバ、歴史的共同会見と禁輸解除への道

「(トランプの企業が)キューバでコンサルタント料を支出したことを否定するか?」と番組リポーターに問われたコンウェイは、「記事で読んだ通りなら、1998年に支出していたと思う」と答えたのだ。

 全米で200万人以上いるキューバ系の共和党支持者のうち140万人以上がフロリダ州在住だが、トランプはフロリダで民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンと接戦を繰り広げている最中。過去の大統領選でも勝敗を左右してきた重要州で、禁輸違反の影響は大きい。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の最近の世論調査の平均値では、クリントンとトランプの差は僅かに0.6ポイント。今週も両候補共、フロリダ州で選挙活動を行っていた。

国交回復を批判してきたのに

 トランプは長年、キューバには(ビジネスチャンスはあるけれども)ビジネスでは進出しないと発言してきた。「カストロ政権を支援」し、「自らのプライドに反する」からだ。さらに今年の大統領選では、キューバと国交回復をしたオバマ批判していた。

【参考記事】孤独な共産主義国、キューバ

 今週オバマは、約50年ぶりのキューバ大使を指名した。予備選でトランプと戦ったキューバ系のマルコ・ルビオ上院議員ら、オバマの対キューバ融和政策に反対する共和党政治家は、直ちにオバマを非難。議会で大使人事を阻止する構えを見せていた。

 だが今回のキューバ問題についてはトランプが説明するべきだと、ルビオはポッドキャストで語っている。「報道されたことが事実なら、法律違反にあたる」

 クリントン陣営もトランプを非難した。「トランプが国益より自分のビジネスを優先させること、そして躊躇なく嘘をつくことが、あらためて明らかになった」と、ヒラリー選対の上級政策顧問のジェイク・サリバンは声明で語っている。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中