最新記事

朝鮮半島

核攻撃の兆候があれば、韓国は平壌を焼き尽くす

2016年9月12日(月)15時35分
ビシャカ・ソナワネ

Kim Hong-Ji-REUTERS

<北朝鮮の5回目の核実験で、核弾頭がほぼ実践レベルに達したとみられることから、韓国は「韓国型大量反撃報復作戦」という焦土化作戦を真剣に用意し始めた>(写真は、8月24日に北朝鮮が発射した潜水艦発射弾道ミサイルを映すソウルのテレビ)

 北朝鮮の5回目の核実験に国際社会の非難が高まるなか、韓国の聯合ニュースは11日、韓国政府が北朝鮮による核兵器の使用兆候をとらえれば、直ちに首都・平壌を壊滅させる作戦があると報じた。

 9日の核実験を受けて、韓国国防省は国会で「韓国型大量反撃報復作戦(KMPR)」を明らかにした。作戦の「目的は平壌の一定区域を地図から完全に消し去ること」だと、軍の消息筋が聯合ニュースの取材に語った。
【参考記事】金正恩の「粛清の嵐」はガセネタか?

「北朝鮮が核兵器を使用する兆候を察知すれば、直ちに弾道ミサイルや榴弾砲を発射させ、北朝鮮指導部が潜んでいそうな区域を集中攻撃して平壌を壊滅させる。北朝鮮の首都は焦土と化し、地図から抹消されるだろう」

 一連の報道が事実なら、作戦の概念は、韓国軍が北朝鮮の最高指導者・金正恩や軍の指導部を標的に、先制攻撃を仕掛けるということだ。使用が想定されるのは、韓国軍が開発した地対地弾道ミサイル「玄武2A」と「玄武2B」、巡航ミサイル「玄武3」など、射程300~1000キロのミサイルだという。
【参考記事】北朝鮮の実験のたびに無力化する米ミサイル防衛

 韓国軍は今後、他の弾道ミサイルの発射実験も実施し、玄武系の弾道ミサイルを大幅に増やす計画があると報じられている。

「韓国軍が核兵器を保持しない状況下で、KMPRは最善の作戦だ」と軍筋は語ったという。

米韓日で独自の制裁

 北朝鮮は9日に声明を発表し、今年1月と2月に実施した核実験と人工衛星の打ち上げ(と称した事実上の長距離弾道ミサイル発射)を受けて国際社会が強化した制裁に対する対応措置として、新たな核実験を実施したと明らかにした。北朝鮮の後ろ盾である中国を含め、韓国、アメリカ、オーストラリア、フランス、日本、ロシアは、北朝鮮の核実験を強く非難した。

 国連安全保障理事会は、今回の核実験が北朝鮮の核実験や弾道ミサイルの開発を禁じた安保理決議を「甚だしく無視した」もので「明確な違反」だと厳しく非難する声明を発表した。

【参考記事】金正恩氏の「ぶち切れ核実験」が止まらない理由

 米国務省で北朝鮮問題を担当するソン・キム北朝鮮政策特別代表は11日、アメリカは北朝鮮に対して独自の追加制裁を科す可能性があると言及した。

 「国連安保理による制裁強化に加え、アメリカと日本と韓国は、北朝鮮に対する独自の制裁を含め、二国間、三国間で協力して対応するため連携を強化していく」

 キムは日米政府が「独自の追加制裁の実施を含め、あらゆる可能性を視野に入れている」としたうえで、制裁の詳細な内容について本格的な調整に入ったと語った

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ中、ガス輸送管「シベリアの力2」で近い将来に契約

ビジネス

米テスラ、自動運転システム開発で中国データの活用計

ワールド

上海市政府、データ海外移転で迅速化対象リスト作成 

ワールド

ウクライナがクリミア基地攻撃、ロ戦闘機3機を破壊=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中