最新記事

ソーシャルメディア

フェイスブックのAIエンジンで16億人が丸裸に

2016年6月27日(月)16時00分
ウィル・オリマス

Ikon Images/GETTY IMAGES

<人工知能搭載の解析エンジン「ディープ・テキスト」がフェイスブック上のやりとりを隈なく分析し尽くす>

 フェイスブックは今月、人工知能(AI)をベースにした最新の文章理解エンジン「ディープ・テキスト」を発表した。ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる技術をコンピューターに取り入れ、人間の言語を高度に理解する仕組み。これによりフェイスブックのサービスが何段階も飛躍する可能性がある。

 例えば「メッセンジャー」のアシスタント機能なら、人間同士のコミュニケーションに近くなる。タクシーに乗るシーンを考えてみよう。ディープ・テキストが搭載されれば、ユーザーがタクシーを呼びたいのか、ちょうど降りたところなのか、アシスタント側がそういった状況まで理解できるようになるはずだ。タクシーを呼ぶ程度のことは、難なくこなすだろう。

 スパムや誹謗中傷のコメントを削除したり、画像付きで何かを売ろうとするユーザーを特定したりすることも自動処理できるはずだ。

 とはいえこの技術の威力が最大限に発揮されるのは、同社が開発中の新たな情報配信プログラムなのは間違いない。フェイスブック上のあらゆるトピックや投稿からユーザーの属性情報を把握して蓄積し、ターゲットを絞り込んでニュースや広告を表示するという構想だ。

【参考記事】フェイスブックのネットタワーが世界(とフェイスブック)をつなぐ

 もちろん文章を読み解くソフトはこれが初めてではない。しかし、これまでの言語処理ソフトは曖昧な表現やスラングの解読が苦手で用途がかなり限定されていた。

 フェイスブックは、コンピューターがいずれ人間の日常的な「自然な言語」を理解できるようになると考えている。当然、英語以外にも対応できるという。

あなたのすべてを知る

「ディープ・テキストは言語理解の分野で大きな飛躍を遂げた」と、フェイスブックの応用マシン学習チームの責任者フセイン・メハナは言う。彼はディープ・テキストがトレンドの最前線に立っていると信じている。

 ディープ・テキストはフェイスブック上の画像とテキストを同時に解析する。例えばユーザーが赤ん坊の画像を「25日目」というキャプションを付けてアップしたとする。ディープ・テキストは、画像がユーザーの子供で、毎日のようにアップされるものの1つだと推測する。

 つまりディープ・テキストは赤ん坊の投稿を「家族ニュース」といったトピックに振り分け、かつて同じような投稿に興味を示した友人に自動的に送ることが可能、というわけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米鉱工業生産、4月製造業は0.3%低下 市場予想下

ビジネス

米4月輸入物価、前月比0.9%上昇 約2年ぶり大幅

ワールド

EXCLUSIVE-トルコ、予算削減額は予想上回る

ビジネス

米金利維持が物価目標達成につながる=クリーブランド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中