最新記事

アメリカ社会

マスク論争で露呈した、アメリカを崩壊させるナルシシズムのパンデミック

2020年09月29日(火)16時20分
船津徹

Carminooch13-iStock

<頭ではマスクの重要性を理解できても、アメリカ人はなぜマスクを着けないのか----「自由の精神」とナルシシストと自尊心の関係>

ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、米国での新型コロナウィルス感染者数は710万人、死者数は20万4千人(9/28現在)を超え、共に世界最多となっています。

アメリカが世界一のコロナホットスポットとなってしまった背景として、トランプ政権のリーダーシップの欠如、地方分権の弊害(州や地域ごとに異なるコロナ対策)、経済格差(マイノリティーの感染率が高い)などがあげられています。しかしアメリカが感染をくい止められない根本的な理由は「自由と勝手の履き違い」にあるように思えてなりません。

アメリカ人が何よりも大切にする「自由の精神」はピューリタン(清教徒)が自由を求めてイギリスからアメリカに渡ってきた建国当初から今も変わらず生き続けています。アメリカで育つ子どもたちは、家庭、学校、地域社会において「個人の自由を尊重すること」「強い個人を確立すること」を叩き込まれて成長していきます。

レジで次の客を考える日本人、おしゃべりをするアメリカ人

アメリカで生活したことがある人は、お店のレジやホテルの受け付けで長々とおしゃべりをするアメリカ人にイラッとした経験があるのではないでしょうか。日本人であれば後ろで待っている人が気になってお喋りを楽しむことなどできません。ところがアメリカ人は他人のことはお構いなしなのです。

人が待っていようがいまいが、自分が会話をしたいからする。まず「自分がどうしたいか」が思考の中心にどっしりと根を張っているのです。これは子育てや教育による産物であり、さらに言えば、自分を優先する「強い個人」を鍛えることが必要だからです。人のことを気にして譲っているようでは、競争が激しいアメリカ社会では生き残ることができないのです。

アメリカでは個人が個人の能力を最大限に発揮することで経済が活性化し、社会が発展すると考えられています。「強いアメリカ」を支えているのは「強い個人」なのです。「自由の精神」は政府や権力による個人への介入を拒絶する国民性につながっています。アメリカ人は「ああしろ」「こうしろ」と人から言われることを極端に嫌うのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国EVのNIO、「オンボ」ブランド車発表 テスラ

ビジネス

ユーロ圏住宅ローン市場は「管理可能」、ECBが点検

ワールド

タカ派姿勢にじむブラジル中銀、総裁は3%のインフレ

ワールド

豪4月失業率、4.1%に上昇 利上げ観測後退
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    104歳にして狩猟免許を初取得したスーパーおばあちゃ…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    むしろ足止め歓迎! 世界の風変わり空港9選

  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 2

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:インドのヒント

特集:インドのヒント

2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり