最新記事

Z世代

息子の嫁を買うために母は娘を売る──児童婚犠牲者の思いを代弁するZ世代が世界を変える

2019年11月22日(金)17時30分
西川彩奈(フランス在住ジャーナリスト)

保守的な家族の反応を恐れ...

アフガニスタンでは女性が歌うことはタブーだ。そんな環境で、YouTubeに流したソニータの曲『売られる花嫁』が現地テレビで放映された時には、彼女は保守的な家族の反応を恐れたと回顧する。

「当時、私がとった行動に、親戚はとてもがっかりしていました。母や兄も、最初はよく思っていませんでした。彼らにとって、私の行動は重要な慣習を破ったことを意味するのです」

「でも、おかしいと思うこと、人間らしく生きることを妨げる慣習、自分自身、姉、友達、そして世界中の若い女の子たちの人生にとって不公平なことには、立ち上がって声を上げないといけない!」

一方で、自分を売ろうとした母に対してソニータは、「母は私のことを愛してくれている。ただ、それしか彼女は方法を知らないのです」と言う。なぜなら、ソニータの母も13歳で結婚、姉たちも若い年齢で結婚をしてきたからだ。

「アフガニスタンでは結婚させることが"女の子にとって最も安全な生き方"という、昔からの信条が続いています。そして、理想の花嫁像についても良妻賢母が求められてきました。母や親戚は、『料理、掃除をしっかりして、しきたりを守ることができ、きちんと子育てをする女性こそが、理想よね』と、よく話していました」

しかし、児童婚がもたらす影響は女の子たちの健康、そして社会へも及ぶ。

世界銀行と女性研究国際センター(ICRW)の調査では、2016年~2030年の間に児童婚を終わらせることで、210万人以上の子供の死を防ぐことができると報告している。

また、貧困の連鎖、女の子たちが学校教育を修了する可能性の減少、家庭内暴力の被害にあう確率の高さなどのリスクも指摘されている。

ソニータは一番初めに児童婚をさせられそうになった頃のことを、こう振り返る。

「家族が初めて私を花嫁として売ろうとしたとき、私はまだ10歳でした。"結婚"という言葉から想像できるのは、綺麗なドレスを着て、友達や家族と遊んでいたお嫁さんごっこ。子供だった私にとって、その後に、どのような生活が待っているかなんてまったく想像もつきませんでした」

では、彼女の例のように"本当の結婚生活"を知らない女の子たちが、その後の現実に直面するとどうなるのだろうか。ソニータはこう、説明する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 2

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 3

    「高慢な態度に失望」...エリザベス女王とヘンリー王…

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    エリザベス女王が「リリベット」に悲しみ、人生で最…

  • 1

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 2

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 3

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 4

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 5

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:インドのヒント

特集:インドのヒント

2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり