最新記事

インタビュー

「日本人にアルゴリズムは通用しない」元インスタグラム・長瀬次英が語る日本のSNS

2020年8月31日(月)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Photo: 遠藤 宏

<企業はSNS広告に大きな関心を寄せており、その流れはコロナ危機でさらに加速しそうだが、日本では注意が必要だ――。インスタグラムの初代日本事業責任者、日本ロレアルのCDOを歴任した注目のマーケターに聞く>

デジタルテクノロジーの急速な進展と普及によって、ビジネスのみならず産業構造、社会の在り方までもが大きく変わりつつある。この流れはコロナ危機によってさらに加速していくだろう。

消費者に向けた広告も、マスメディアから個別にターゲティングできるデジタルメディアへと移行しつつある。
marketingbigbang20200831-cover150.jpg
特にSNSは、日本の利用者数は7975万人(普及率80%)と言われており、企業もSNS広告に対して大きな関心を寄せている。ユーザーのアクションから好みや関心を分析し、それをもとに広告を表示する一見無駄のないアルゴリズムが人気の秘密だ。

しかし、インスタグラムの初代日本事業責任者であり、日本ロレアル初のCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)として同社のデジタル施策全般を牽引した注目のマーケター、長瀬次英氏は「日本人にアルゴリズムは通用しない」と断言する。

このたび、初の著書『マーケティング・ビッグバン――インフルエンスは「熱量」で起こす』(CCCメディアハウス)を出版し、その多彩で豊富な経験をもとに――そしてその経歴からは意外にも思える――新時代のマーケティング・コンセプトを打ち出した長瀬氏に、日本のSNSの特徴について話を聞いた。

なぜ日本人にアルゴリズムは通用しないのか。


まず、日本人のSNSの使い方が海外とはまったく違うのが原因ですね。

アメリカ人や中国人がSNSを使う大きな目的のひとつは「自分と同じ趣味の人を探すため」です。だから、見ず知らずの人でも興味を持てば積極的に話しかけるし、投稿やリアクションも能動的かつオープン。SNS上でも、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いとはっきり表明します。

対して、日本人は他人の投稿を見たり、反応したりするのがメイン。それに義理人情という目に見えない社会的ルールがあって、それはリアルだけでなく、SNSにも反映されている。

興味がないものでも仲間が「いいね!」しているから......、そして中には、友だちの投稿すべてに「いいね!」を押している人すらいます。そんな、SNSでさえ本心を出すことが少ない日本人に対して、普段から素直に感情を表現するアメリカ人の作ったアルゴリズムが通用しないのは当然です。

確かに、友人や同僚の投稿に「いいね!」を押さなければならない圧力に悩んでSNSをやめた人、また、普段自分のタイムラインに流れてくる投稿や広告がまったく興味・関心を惹かないものばかりだという声は頻繁に聞く。

【関連記事】奇抜な名前の高級食パン店を大ヒットさせたプロデューサー、そのノウハウを明かす

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、電動化とソフトへ投資倍増 30年度までに1

ワールド

中国、生産能力過剰論に反論 米欧の「露骨な貿易保護

ワールド

ウクライナが米欧を戦争に巻き込む恐れ、プーチン氏側

ビジネス

商業用不動産、ユーロ圏金融システムの弱点=ECB金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中