最新記事

インタビュー

ロボットに「居場所」ができるのは、人々に飽きられたとき──クリエイター・吉崎航の見据える夢

2020年6月17日(水)17時30分
Torus(トーラス)by ABEJA

吉崎:まとめると、「ロボットとは何か?」という問いの答えは「拡張(強くなりたい)」「代替(代わりに働いてほしい)」、そして「媒体(遠くに伝えたい)」という思いをかたちにしたものだと考えています。

飽きられたとき、ロボットの「居場所」ができる

Yoshizaki3.jpg

吉崎:いまから10年ほど前、東京・お台場に高さ18メートルの「実物大ガンダム」が立ちました。私も1人の見物客として制作途中から見ていました。あの当時は、本当にそんなものが作れるのか、誰も確信が持てなかったのではないでしょうか。

しかし今、「巨大なヒト型建造物を作るなんて不可能だ!」なんて言う人はいません。一般の方にも巨大建造物を作るノウハウが身についたから...ではもちろんなく、ようするに慣れてしまったんですね。

世の中は、簡単には理解できない複雑な技術であふれています。新幹線しかり、パワーショベルしかり、一人では作れません。そんな技術の塊にもいちいち感動する人はそう多くない。あえて言えば「飽きている」からです。でも、この「飽きられる」という状態が、ロボットには重要だと考えています。

──「飽きられる」というのはつまり、社会的に受容されるから?

吉崎:そうです。モノ珍しさで注目されて終わり、から「飽きるほど見ても、好きな人は好き」という状態に達すれば、かなりの進歩です。実際に技術的にものすごいものだとしても、そこから先に進むことが重要です。どこに置いたらより使いやすくなるか、お金を稼げるか、といった次の課題に進めますから。

私が望むのは、ロボットの社会的な置き場所です。例えばいまどき、車庫のある家なんて珍しくないですよね。それは車にとって車庫が「社会的な居場所」のひとつとして定着しているからです。ロボットもそうなるといい。

──つまり、今のロボットは「居場所」がない。

吉崎:そうです。「居場所」があれば、存在そのものが当たり前になります。

ロボットの「居場所」ができるには、法律を変えたり、ロボットの活躍を誰かが格好よく見せる必要があるのかもしれない。それとも、広める場所(国)を選ぶことかもしれない、それとは関係なく偶然にロボットが流行るかもしれない。

いずれにせよ、ロボットが人々から飽きられる時代が来たら、私の夢がかなったといえます。

ロボットがロボットを「卒業」する瞬間

Yoshizaki4.jpg

吉崎:「ロボット」という概念は、あえていえば最適解が見つかる前の「丸投げの解決法」だと思っています。「人間にできるのだから、ロボットにだってできるはず」と、モーターやAIのような"何か"を組み合わせてから頑張るーーという段階の技術。なので発想としては安直です。

「お掃除ロボット」や「警備ロボット」など「ロボット」と呼ばれるうちは、まだ発展の途中です。どうコストを抑えて作るかなど、具体の話よりも先に、まずは機能を満たす部品を組み合わせれば仕事ができる、という段階です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係

ビジネス

ウーバー第1四半期、予想外の純損失 株価9%安

ビジネス

NYタイムズ、1─3月売上高が予想上回る デジタル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中