最新記事

プロ野球

佐々木朗希が塗り替えた「世界最高の投球」、アメリカの評価と「8回降板」の是非

Perfect Pitcher, Perfect Game

2022年4月27日(水)11時43分
ジョシュ・レビン(スレート誌記者)

トップレベルのプロ野球リーグの歴史上、2試合連続完全試合を成し遂げた投手は存在しない(大学ソフトボールと高校野球には前例がある)。この4月の第3日曜日までは、その可能性を示唆することさえばかげていた。

不可能とされる達成に近年、最も近づいたのは、シカゴ・ホワイトソックスのマーク・バーリーだ。2009年7月に完全試合をし、次に先発した試合で6回2死までパーフェクトピッチングを続けた。

2試合連続ノーヒットノーランは、1938年にシンシナティ・レッズのジョニー・バンダーミーアが達成している。被安打ゼロの記録が止まったのは、その次の先発試合の4イニング目。本人は大いに安心した。「終わってよかった」。バンダーミーアは当時、そう発言した。「久しぶりに、よく眠れるだろう」

岩手県出身の佐々木は悲劇を経験している。11年の東日本大震災で発生した津波で自宅が流され、父親と祖父母を亡くした。今年の3月、佐々木は「11年たっても、つらさや悲しみは消えない」とインタビューで語っている。

日本の野球界では、佐々木は高校時代からスーパースターだ。19年10月に行われたドラフト会議では、4球団から1位指名を受けた。1軍デビューした昨年の成績は3勝2敗で、防御率2.27。今季ははるかに上々で、これまで31イニングを投げて防御率1.16、奪三振数は計56。被安打数7、与四死球3にとどまっている(4月23日時点)。

あの大谷翔平をも超えるか?

佐々木のピッチングをMLBで見たくても、あと数年は待たなければならないだろう。もちろん、本人が望むなら、という条件付きだ。

日本人選手の移籍をめぐるポスティングシステムは極めて複雑で、年齢や所属年数によってさまざまなシナリオがあり、それもいつどう改定されるか分からない。

「二刀流」の大谷翔平が17年に、このシステムを利用してロサンゼルス・エンゼルスに移籍したのは23歳のときだ。おかげで大谷は大金を失った可能性がある。現行制度では、25歳未満の選手には契約金に制限がかけられるためだ。

アメリカンリーグの昨年の最優秀選手賞(MVP)に選出された大谷は、大リーグで誰もしたことがないことをしている。だがその大谷も、佐々木が今回見せた投球内容には及ばない。

次回の先発試合で、佐々木は17イニング連続無安打、52者連続アウトの記録を伸ばすのか(ちなみに、MLBの連続アウト最長記録は46打者だ)。今となっては、それはあり得ないと考えるほうがばかげているかもしれない。

©2022 The Slate Group

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中