最新記事

スター・ウォーズ完結編『スカイウォーカーの夜明け』への道のり

【再録】カイロ・レンの裸は女性客へのサービスショットだった

SEXY STAR WARS

2019年12月26日(木)18時00分
ブローガン・モリス

カイロは性的魅力でレイをそそのかす? Star Wars-YouTube

<ついに公開された完結編『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。最新作でも目が離せないカイロ・レンだが、前作では濡れ場も披露していた。当時の本誌掲載記事より>

シリーズ最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』で、ライアン・ジョンソン監督は伝統を破った。はるかかなたの宇宙にセックスを持ち込んだのだ。これまでの世界観に収まる整備士ローズのキスを除けば、同作は異例なほどセクシーだ。

惑星アク・トゥーにそそり立つフォースの木や、水の湧き出る洞穴のようなあからさまな性的比喩も、婉曲表現もある。ある記者が書いたように、DJ(ベニシオ・デル・トロ)が「女性の登場人物を見つめると、映画はR指定ぎりぎりの世界に連れていかれる」。

離れ離れのレイ(デイジー・リドリー)とカイロ・レン(アダム・ドライバー)は時にフォースを使い、テレパシーで交流をする。クローズアップで撮影された2人の場面は性的な親密さが漂う。彼らの息遣いと静かに響く声だけが聞こえ、観客は官能で脳みそがとろけるだろう。2人は父親から隠れて秘密の関係を結ぶティーンのよう。空間を超えて手と手を触れ合わせる場面では恍惚状態になる。

レイも息をのんだように、みだらでたくましいカイロの裸は女性観客へのサービスカット。シスがジェダイをそそのかすのに初めて性的魅力を使ったのだ。

色彩にもエロチックな熱がこもる。目立つのはレイの顔に映るたき火の炎、カイロの唇といった赤の差し色。映画を通して、赤は流血の暴力とセックスの象徴だ。赤い炎を背景に、カイロがレイに「おまえは何者でもない。でも俺にとっては違う」と言い放つ場面で緊張は一気に解き放たれ、求愛が達成される。

勝利したヒーローを痛めつけたり、ジェダイを虐殺したりという「大人向け」の筋書きは過去にもあった。だが『最後のジェダイ』ほど、人間の性を見つめたものはない(レイア姫のビキニ姿には監督の情熱が感じられなかった)。大衆向け映画で大胆な暴力描写ができる時代、『スター・ウォーズ』ももっと自由に性を表現していい。

Star Wars: The Last Jedi Trailer (Official) Star Wars-YouTube


©2018 The Slate Group

<2018年1月2日/9日号掲載>

【参考記事】3分で分かるスター・ウォーズ過去8作のあらすじ(初心者向け&復習用)
【参考記事】 中二病のカイロ・レンが愛おしい

2019SWmook_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

SPECIAL EDITION「STAR WARS スター・ウォーズ完結編『スカイウォーカーの夜明け』への道のり」が好評発売中。登場人物に焦点を当て、シリーズの物語をたどり、ファンの視点で数々の場面を振り返る。表紙は公認アーティストのTSUNEO SANDA氏が描き下ろし。


【限定非売品の表紙ポスタープレゼント実施中】
ルーカスフィルム公認アーティストのTSUNEO SANDA氏が本誌のために描き下ろした表紙を、そのままB3変型判のポスターにした限定非売品を100名様にプレゼントします。応募方法はツイートするだけ。
詳しくはこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピン第1四半期GDP、前年比+5.7%で予想

ビジネス

景気動向一致指数、3月は前月比2.4ポイント改善 

ワールド

再送-ブラジル南部洪水の死者100人に、さらなる雨

ワールド

印ヒーロー・モトコープ、1─3月期は18.3%増益
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中