最新記事

株の基礎知識

石油関連の銘柄はPBR1倍以下でなぜか「割安」、だが今後は......

2019年10月21日(月)16時40分
星野涼太 ※株の窓口より転載

■引くか、攻めるか――分かれる「将来のビジョン」

世界的な流れを考えれば、油田開発や石油の精製・販売に依存している限り、長期的に収益を上げ続けるのは非常に難しいと考えられる。要するに、国内石油関連企業の経営にも「脱炭素」が求められている。

●JXTGホールディングス<5020>

石油・石炭最大手のJXTGホールディングスは企業の将来像として、石油・ガス開発ビジネスや石油精製・販売ビジネスの収益割合を徐々に引き下げ、洋上風力発電や地熱発電、リサイクルビジネスといった石油非関連収益を伸ばす方針を明確に開示している。

kabumado191021pbr-chart1.png

(Chart by TradingView

●国際石油開発帝石<1605>

それに対して、鉱業最大手の国際石油開発帝石は、石油関連ビジネスに対して強気な方針を維持している。

同社は中期経営計画で石油・天然ガス上流事業への積極的な投資計画を掲げており、生産量も大幅に増やす考えだ。2040年のビジョンとして「国際大手石油会社トップ10入り」も狙っており、依然として化石燃料頼みのビジネスモデルを維持する姿勢だ。

kabumado191021pbr-chart2.png

(Chart by TradingView

同じ「石油関連銘柄」に分類される企業でも、現時点における将来の展望には大きな違いがあることがわかる。関連銘柄だからといって、ひとくくりにして捉えないほうがいいだろう。

アナリストのひとり言

メディアやネットで投資の話がなされる際は、業績やバリュエーション(PERや配当利回り)がフォーカスされやすい。これらは全て数字で表されるために理解しやすく、注目されやすいのは十分頷ける。

■企業の「ビジョン」は材料になり得るのか?

一方で、企業が提示する「ビジョン」が材料として語られることは少ない。

企業の中にはビジョンとして「国民の生活を支える」「自社の技術で経済を支える」といったように非常に抽象的で曖昧な方針を掲げている企業も多く、結果として「ビジョンは投資の判断材料になりえない」という認識ができてしまうのも事実だ。

しかし、企業の中には、先ほどのJXTGホールディングスのように具体的かつ明確なビジョンを示す企業もあり、それを投資の材料として見ることはでき、評価にもつなげられる。

企業の固定資産の中には、使用期間が何十年にも及ぶ設備なども含まれる。そのため、数十年先のビジョンとはいえ、足元の投資計画にはそれが反映され、実際に設備投資が行われる。その点で、具体的なビジョンを掲げる企業は数十年先の収益を既に作り始めている、とも言えるだろう。

そして株式市場では、ビジョンからくる企業活動が「先取り」という形で株価に反映されることがある。何十年先のビジョンだとしても、その内容が数年以内の株価上昇をもたらすことは十分起こり得るのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、イスラエルへの兵器輸送一部停止か ハマスとの戦

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中