最新記事

仮想通貨

ビットコイン採掘能力が急低下 一大マイニング拠点カザフフスタンがデモでネット遮断

2022年1月7日(金)13時16分
ビットコイン

ビットコインのネットワークの計算能力が今週、世界的に急激に落ち込んでいる。燃料価格引き上げに抗議するデモが拡大し政府が全土に非常事態を宣言した中央アジア・カザフスタンが今、米国に次ぐ世界第2位のビットコイン採掘(マイニング)の拠点に急成長していたためだ。写真はイメージ。昨年10月撮影(2022年 ロイター/Edgar Su)

暗号資産(仮想通貨)ビットコインのネットワークの計算能力が今週、世界的に急激に落ち込んでいる。燃料価格引き上げに抗議するデモが拡大し政府が全土に非常事態を宣言した中央アジア・カザフスタンが今、米国に次ぐ世界第2位のビットコイン採掘(マイニング)の拠点に急成長していたためだ。5日に全土でインターネットが遮断されたことが影響したと指摘されている。

ケンブリッジ・センター・フォー・オルタナティブ・ファイナンスによると、カザフは昨年に採掘量が世界第2位になった。主要な採掘拠点だった中国が国内での採掘活動を取り締まったことが背景だ。

昨年8月時点のビットコインの採掘速度(1秒当たりの計算力)で、カザフは全世界の採掘能力の18%を占めるに至っていた。中国が採掘の取り締まりに着手する前の昨年4月はわずか8%だった。

世界各地ではさまざまな採掘業者がチームを組む形でビットコインを作り出しているが、採掘業者BTCドット・コムのデータによると、アントプールやF2プールを含むこうした主要な採掘業者たちの採掘速度は、6日1215GMTに4日遅くに比べて約14%低下した。

当局の採掘規制も

ネットワークに参加する採掘業者が多いほど、新しいビットコインを採掘するのに必要なコンピューターの電力量も増える。採掘業者がネットワークから脱落して採掘能力が下がれば、理論的には他の採掘業者が新しいビットコインをつくる余地が増えそうなものだ。

カザフスタンの実態は、採掘の電力のほとんどが老朽化した石炭火力発電に頼っている。こうした石炭火力発電自体が、各国・地域当局にとっては経済の脱炭素化を目指す上で頭の痛い存在だ。

カザフ政府は昨年、正規の届け出をしていない採掘業者を取り締まる意向を発表している。こうした業者の消費電力は届け出をした業者の2倍にもなるとみられている。同国エネルギー省は昨年、届け出をしていない業者の電力消費が最大1.2ギガワット時と試算。正規業者では600メガワット時とし、合計で国内発電能力の約8%を消費していると指摘した。

なお、今回はビットコインのこうした採掘能力鈍化も必ずしも価格の強材料にはなっていない。米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢を強めているためで、投資家のリスク選好が後退し、6日のビットコインは1ビットコイン=4万3000ドルを割り込んだ。これは数カ月ぶりの安値を試す水準だ。

(Tom Wilson記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英軍個人情報に不正アクセス、スナク氏「悪意ある人物

ワールド

プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前

ワールド

ロシア裁判所、JPモルガンとコメルツ銀の資産差し押

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「ハイヒールが効率的な歩行に役立つ」という最新研究

  • 8

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 9

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中