最新記事

労働

世界で導入が進む「週休3日制」 コロナ禍が後押しするサステイナブルな労働

2021年8月15日(日)18時10分

一方、デンマークのオシェーレト市は3年間の実験的取り組みの一環として、300人の職員を対象に給与を全額払って週休3日制を導入し、一定の成果を上げている。

オシェーレト市の幹部によると「金曜日が休みになって大騒ぎだった」。「3日間働かなくてもいいと、心理的に何らかの影響がある。(働く)4日間のためにたっぷりエネルギーがもらえる」と述べた。「普通」に戻る予定はないという。

素晴らしいスタート

スペインでは産業省が、給与を下げずに労働時間を短縮することを目指す5000万ユーロの試験的プロジェクトを検討している。

先のマドリード地方選挙で17%の票を獲得した新興左派政党マスパイスが中央の左派連立政権にこのプロジェクトの採用を働きかけている。

同党はこのプロジェクトを、労働時間短縮が生産性や収益性に与える影響を調べるための実験と位置付けている。

アンダルシアに拠点を置くソフトウエア・エル・ソルは減給のない週休3日制に移行済みで、この試験的な取り組みの開始後に人員を15%増やした。

マーケティングディレクターのペドロ・コルテス氏によると「売上高が20%増えて、欠勤率は大幅に下がった。生産性だけでなく、顧客や従業員の満足度も上がっている」という。

アイスランド、スコットランド、スウェーデンに拠点を構える旅行会社、ノルディック・ビジターは、週労働時間を40時間から35時間に短縮したところ従業員の満足度が向上し、病欠が減り、利益が増えた。

ニュージーランドの不動産プランニング会社、パペチュアル・ガーディアンは、2018年に試験的に始めた週休3日制を恒久化すると、生産性が急激に高まり、欠勤が減少した。

ドイツ最大の労働組合は3月に主要な工業地帯で賃金協定に合意し、一部の労働者が大幅な収入減なしに週休3日制に移行できるようになった。ニュージーランドでは日用品大手のユニリーバが現地の全従業員を対象に週休3日制の試行を開始した。

日本ではみずほが約4万5000人の従業員に週休3日か週休4日を選べるようにしている。マイクロソフトでは昨年、日本の従業員2300人に金曜日の休暇を与えたことで生産性が40%向上したという。

オシェーレト市の幹部は「もちろん仕事を見直す上での課題はあるが、それはこれまでもあった」と述べた。金曜日が休日になるのは「本当に素晴らしく」、職員は制度の継続を望んでいるという。

(Clara-Laeila Laudette記者、Belén Carreño記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・インド、新たな変異株「デルタプラス」確認 感染力さらに強く
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中