最新記事

不動産

ウッドショックの激震、住宅木材価格は「平時の4倍」──中小工務店、ハウスメーカーは苦境 購入者への影響は?

2021年6月25日(金)17時10分
森 創一郎(東洋経済記者) *東洋経済オンラインからの転載

だが、あるハウスメーカーの関係者は「『影響は限定的』と言っておかないと、建材業者から足元を見られて価格をつり上げられる。逆に『影響なし』と強調すると、『余裕があるなら木材を融通しない』と言われかねない。本当に難しい交渉になっている」と本音を漏らす。

では、住宅を購入する側への影響はどれほどなのか。現在、高騰しているのは梁や柱に使う集成材で、国内では梁は9割、柱は6割を輸入材に頼っている。だが、そうした構造材は家全体の原価の3~4%にすぎない。あるハウスメーカー幹部は、「仮に集成材などの調達価格が1.5倍になっても、1棟あたりの販売価格の上昇は20万円程度」と話す。

例えば、都心部で狭小戸建て住宅を手掛けるオープンハウスが5月に公表した資料では、同社の平均的な販売価格4400万円の住宅のうち、「(ウッドショックによる影響額は)金額にして36万円」と説明している。

一方、アパート建築最大手の大東建託では、カナダ産のランバー材が高騰し、2022年3月期はコストが約60億円上昇。完成工事の利益率を1.5ポイント押し下げる要因になるという。同社の小林克満社長は「ウッドショックを避けることはできない。木材価格の状況、為替の状況に鑑みて早め早めに対応する」と強調した。

住宅設備最大手のLIXILはウッドショックによる新築需要の減少を懸念するが、瀬戸欣哉CEOは「(新築の供給が減っても)中古住宅を買う選択肢は当然、考えられる。中古住宅をリフォームすることになると、水まわりだけではなく、外壁なども重要になってくる」と述べ、リフォーム需要に期待を寄せる。

前出のIG証券・山口氏は「1990年代、あるいは2008年のリーマンショック直前に起きたウッドショックの際は1年半から2年ほど続いた。今回のアメリカ市場での木材高騰はまもなく1年になるが、あと数カ月は高値圏が続いてもおかしくない」と予想する。

プレカットメーカーからは「7月から需給は改善されていくが、価格は年内は高値が続きそうだ」との見方も出ている。2022年の春ごろまで、国内でウッドショックの余波が続くことになりそうだ。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中