最新記事

ファッション

アジア発「スキンケアする男」に熱視線 シャネルなど大手ブランドも参戦

2018年12月26日(水)10時13分

男性化粧品が新たに生まれ変わろうとしている。都内で9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

ジッポライターのように親指だけで開閉ができるアイシャドーから、淡い青味がかったグレーのパッケージの薄付きファンデーションまで、男性化粧品が新たに生まれ変わろうとしている。

化粧品メーカー各社は男性化粧品をもっとメジャーなものにしようと本腰を入れ始めた。

仏シャネルや日本のポーラ・オルビスホールディングスなどは、男性化粧品の需要が特にアジアで高まっているのを機に新しいラインを発売し、これまでずっと不調だった同部門がようやく上向くことを期待している。

芸能界や限られた美容ブロガーの世界以外にも、メーカーがターゲットとしている男性化粧品ブランドの顧客はいる。例えば、イメージを大切にする企業経営者などだ。ブランド側も、「化粧していることが目立たない」という一部の製品の特長を強調している。

清潔感を出すことはビジネススキルの1つとなりつつあると、ポーラ・オルビス傘下のACRO代表取締役社長の御後章氏は言う。同社は9月、男性化粧品ラインを発売した。その中には、「クリスピン」や「ホアキン」という名が1つ1つに付けられた15種類のスキントーンが選べるファンデーションも含まれる。

韓国では、Kポップ男性アイドルグループが人気で、彼らのキュートで非の打ちどころのないルックスは、魅力的な男性像を再定義するのに一役買っている。同国などでの需要の高まりは、これまでニッチ市場だった男性化粧品が成長する可能性を示している。

ファッションデザイナーとして自身の会社を経営しているリ・ホジュンさん(28)は、眉を描いたりする一部の知人とは違い、フルメークはしたくないが、BBクリームのような薄付きの保湿剤の使用は当たり前となっており、男性コスメのコーナーが拡大しているコスメショップを訪れていると話す。

「男なので、コスメショップに入るのは恥ずかしく、変な感じがしていた。でも今では、ためらいなく入れる」と、ホジュンさんは女友だちと首都ソウルの街を歩きながら語った。

市場調査会社ユーロモニターのデータによると、アジアの男性化粧品市場は依然小さく、2017年は世界全体の市場規模495億ドル(約5.5兆円)の5分の1にも満たなかった。

しかし他の市場がシェービングやデオドラント製品が中心であるのに対し、アジアはすでに急成長分野のスキンケア製品が売れ筋で、世界売上高の6割以上を占めている。

男性の必需品

大半の化粧品メーカーは、男性化粧品に対してせいぜい試験的に販売しているだけだ。

だが、男性用ファンデーションを75ドルで販売するシャネルなどの新規参入者は、コスメが洗練されるにつれ、男性たちの見る目も厳しくなると主張する。例えば、大きな毛穴を隠すために特別な質感を求めるようになると。

香水やファッションで有名なシャネルは、「ボーイ・ドゥ・シャネル」という新しい男性メークアップラインの中でマットな質感のリップバームやグレーの眉ペンシルを発売している。

「男性の特定の需要にターゲットを絞ることは、新たな使用方法や多様な使い方のできる新製品や新しいフォーマットの開発において、業界全体を真の革新へと導くだろう」とシャネルはメールでコメントした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪小売売上高、4月は前月比0.1%増 予想下回る

ワールド

ロシア、国際経済フォーラムにタリバン招請=高官

ワールド

EU、グリーン技術の域内生産強化法を承認 競争力底

ビジネス

印製薬企業、米市場の供給不足背景に売上高改善続く=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 5

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 6

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 7

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 8

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 9

    台湾を威嚇する中国になぜかべったり、国民党は共産…

  • 10

    トランプ&米共和党、「捕まえて殺す」流儀への謎の執…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中