最新記事

リコール隠し

破綻しても変わらなかったGMの隠蔽体質

税金で救済されて立ち直ったと思ったのは甘かった。「旧GM」から「新生GM」に引き継がれた秘密主義

2014年4月3日(木)17時22分
ハワード・コプロウィッツ

四面楚歌 公聴会で「新生GM」を擁護したバーラCEO Kevin Lamarque-Reuters

 米ゼネラル・モーターズ(GM)がエンジン点火装置の不具合を理由に計7車種、約162万台のリコール(無償回収・修理)を発表したのは今年2月のこと。走行中にエンジンが急停止したり、エアバックが作動しないおそれがあり、この問題に関連して少なくとも12人の死亡が確認されている。

 しかも、GMはこの不具合を2001年に把握していたにも関わらず、10年以上に渡って問題を放置していたとされる。

 1月にGMのCEO(最高経営責任者)に就任したメアリー・バーラはこの大規模リコールと並行して、車両の品質に関する徹底的な再調査を指示。その結果、今度はハンドル操作を補助するパワーステアリングの不具合が見つかり、約151万台が新たにリコール対象となった。

 米議会や当局が調査に乗り出すなか、バーラCEOは4月1日、米下院エネルギー商業委員会の公聴会に出席して謝罪。翌2日は上院の公聴会で議員らの追及を浴びた。

 議員らが特に問題視するのが、GMの隠ぺい体質だ。「GMから秘密主義を駆逐する覚悟があるようにみえない点を非常に懸念している」と、エドワード・マーキー上院議員(民主党)はバーラに迫った。「単なるお詫び以上の踏み込んだ発言をすべきだ」

 悪いニュースを隠ぺいしようという企業文化が社内に蔓延していたのではないかと問いただす声も上がった。これに対し、同社の要職を長年務めてきたバーラは「悪いニュースを歓迎しない空気があったと思う」と返答。エンジン点火装置の不具合を迅速に公表しない判断を下した責任者や部署について問われると、独立した調査委員会の調査を待つとしながらも、事実と確認されれば、解雇を含む「適切な手段を講ずる」と語った。

 それでも、議員の追及は止まらなかった。ケリー・エイヨット上院議員(共和党)は、社内調査を主導するアントン・バルーカス独立調査官の報酬をGMが支払っていることを問題視。バルーカスは元連邦検事で、リーマン・ブラザーズ破綻の調査を主導した人物だ。これに対し、バーラは調査の中立性は保たれると反論し、「彼がGMのために自身の評判を傷つけることはありえない」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネットフリックス、広告付きプラン利用者が4000万

ビジネス

アングル:ミーム株復活に歓喜といら立ち、21年との

ビジネス

ジャクソンホール会議、8月22─24日に開催=米カ

ビジネス

米国株式市場=最高値更新、CPI受け利下げ期待高ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中