コラム

米民主党のスター知事、驚愕のセクハラ弁解の内容とは(パックン)

2021年08月17日(火)20時00分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
クオモ知事のセクハラ疑惑(風刺画)

©2021 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<セクハラ疑惑をきっかけに辞任にまで追い込まれたクオモ州知事だが、その言い訳は「自爆」でしかなかった>

アンドルー・クオモの人生は順風満帆だった。3期を務めたニューヨーク州の人気知事の父を持ち、自身も3期目の同州の人気知事。コロナ対策で株を上げ、次期大統領選への出馬も噂されたほどだ。しかし、セクハラ疑惑が浮上した昨年末から風向きが180度変わり、辞任を表明。今は逆風満帆とでも言えよう。

8月、ニューヨーク州の司法長官が疑惑の調査報告書を公表した。アシスタントや元側近、警護担当など11人の女性に対するクオモ氏のセクハラ行為が赤裸々につづられていた。口にキスしたり、お尻や胸をつかんだり、おなかや足を触ったりした。「年上の男は好きか?」とか、「僕は触られたい!」とか「脱衣ポーカーをやろう!」などと口説いたりした。疑惑が浮上すると事実を隠蔽したり、証言者を中傷したりした。

報告書は、こんなドロドロな話で165ページにわたる大作になった。夏休み中にホラーやゾンビ系の小説を読むアメリカ人は多いが、今年はこの報告書で十分ヒヤッとするだろう。

一方、クオモ氏は「不適切な接し方は1回もしていない」と疑惑を強く否定する動画を配信。女性の体に触れたことはセクハラではないと、奇妙な論理で反論した。いわく、「僕は全く同じしぐさを誰にでもする。黒人にも白人にも。お年寄りにも、若者にも。異性愛者にもLGBTQの人にも。権力者にも、友人にも、知らない人にも、道で会った人にも」という。そして、証拠写真がズラリ並んだスライドショーも披露! 確かに属性を問わず、顔を触ったり、キスしたりしていた。

なかにはアル・ゴア元副大統領やビル・クリントン元大統領とのツーショットもあった。セクハラ疑惑を払拭するために、クリントンを引き出すのはなかなか珍しい判断だと思われるけど......。印象として、弁解の中核は I grope everyone(僕はみんなにセクハラする)という主張だったようだ。

クオモ氏がカメラの前でここまで自爆するとは少し驚き。去年、コロナ関連の記者会見はテレビ界の優れた業績に贈られるエミー賞を受賞するほど好評だった。しかし、実はこれも報告書に登場する。関係者の証言によると、事務所に飾ってあったエミー賞の像を見て「こいつ、良いおっぱいしてるだろう?!」というようなことをクオモが言ったそうだ。

ゴアから銅像まで、ストライクゾーンが広いクオモ。今回は三振だったけど。

ポイント

CUOMO'S DEFENSE STRATEGY COULD USE SOME TWEAKING...

クオモの自己防衛戦略にはちょっと調整が必要だな...

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story