最新記事
シリーズ日本再発見

居酒屋のお通し(=強制的な前菜)には納得できない!?

2017年03月10日(金)16時07分
高野智宏

では、外国人だけでなく日本人からも不満が出ているお通しシステムを、なぜ居酒屋側は続けるのか。それは、お通し用の料理は、比較的簡単かつ大量に作ることができるものが大半であり、材料費や人件費を抑えられる一方、しっかりと人数分の利益を得られるからにちがいない。

そして、そんなお通しの内容にも不満が多いのではないか。先のアンケートで否定的な回答が95%近くに上った背景には、外国人が抱く強制感以外にも、お通しに出される料理の質に対する不満があるはずだ。

反面、なかにはお通しを通常のメニューから選べる店や、お通し代以上の価値を持つ料理をお通しという形で出す店もあり、そうした店ならば日本人から文句が出ることは少ないのではないか。

また、外国人客に対する説明不足も大きなトラブルの要因だ。たとえば、「お通し」とはテーブルチャージのことであり、チャージをいただく代わりとして料理を1品サービスしているとメニューなどで明示しておけば、外国人にも受け入れやすくなるだろう。

とはいえ、一方でお通しシステム自体が必要ないという声も、ネットの意識調査のとおり大きい。契約の文化をもつ外国人同様に、食べたい料理だけ注文し、その対価を支払うという意見だ。確かにそれも正論でありひとつの意見だ。実際にそうした店もある。

しかし、居酒屋におけるすべてのサービスが有料となったらどうだろう。お通しとともに出されるおしぼりや食後にお願いすれば出されるお茶。また、焼酎やウイスキーを割る水や氷なども別料金となっては、日本人が長年親しんできた居酒屋ならではの良さがなくなってしまうのではないか。

となれば、何より必要なのは、特に外国人客に対する「お通しシステム」の説明だろう(一部では改善も求められるかもしれない)。しかし、だからといって居酒屋特有のサービスが失われてしまっては寂しい限り。やはり居酒屋は、誰もが気兼ねなく酒や料理を楽しめる、日本の誇る文化のひとつなのだから。

【参考記事】世界も、今の人たちも、和食の素晴らしさをまだ知らない

japan_banner500-9.jpg

japan_banner500-8.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中