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乾坤一擲の勝負に出た岸田首相、安倍派パージの見えない着地点
「政治とカネ」軽視のツケ
捜査の過程で仮に看過できない裏金の個人的着服が判明した場合、不記載・虚偽記載にとどまらぬ「政治家個人への寄付」違反が問責される可能性もある。政治資金規正法は「政党を除いて、何人も政治家個人に対して金銭等による寄附をしてはならない」と規定しており(第21条の2)、違反した政治家は1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処せられる(時効は3年)。政党の幹事長などが個人として数千万から数十億円規模の「政策活動費」を支給されているのはこの規定に基づく。
一般的に雑所得として所得税の課税対象となるのは、必要経費を控除した残額になるが、政策活動費は一定の条件を満たせば全額が必要経費として認められるため事実上の非課税扱いになる。しかも使途の公開義務が課せられていないブラックボックスだ。今回のキックバックを「派閥から所属議員に配ったのではなく、党から派閥を経由して支給された政策活動費だ」とする安倍派の池田佳隆衆院議員の強弁は、派閥を超えて党の経理を捜査の対象とする危うさも含む。
今回の裏金疑惑が岸田政権を弱体化させたことは疑いない。政治資金収支報告書に4000万円以上のパーティー収入を記載せず、罰金100万円と公民権停止3年の略式命令を受けた22年の薗浦健太郎元議員の事件を「他山の石」とせず、「政治とカネ」を軽視してきたツケを払うのは自業自得と言うほかない。
岸田首相が仕掛けた安倍派パージに対する「反動」が顕在化するのはこれからだ。党内力学は変容し、森喜朗元首相の下で集団指導体制を取る安倍派の体制も動揺する。「岸田下ろし」が勃発したら、3月の新年度政府予算成立後に内閣総辞職に追い込まれる可能性も出てきた。
その過程で、後継首相候補としての無派閥議員の価値を世間が押し上げれば、「ポスト岸田の本命候補不在」という「幸運」は、完全に過去のものになるだろう。
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