コラム

トランプもバイデンも、日本製鉄のUSスチール買収に反対...日本が思い出すべき、かつての「身勝手」

2024年02月22日(木)11時05分

日本人にとって当たり前の行動をアメリカ人も

だが日本企業が海外に進出するとなると全く論調が変わり、アメリカの企業を買収することや、買収後にリストラを行って利益を上げることは、むしろ高く評価されていたというのが現実だ。

こうした、ある種、片務的な関係が持続していたのも全てはアメリカが自由貿易主義だったからである。しかしここ10年でアメリカの世論は大きく変わった。日本社会と同様、外国企業が自国で商売をしたり、企業の売り買いをすることに強いアレルギーを示すようになった。今回の一連の反応は、日本人にとっては当たり前の行動をアメリカ人もするようになっただけであり、日本人が取ってきた行動がそのまま返ってきているだけとも解釈できる。

時代は確実に経済の分断に向けて動き始めており、誰が大統領になっても、アメリカ市場という巨大なリソースをタダ同然で利用できるという従来の常識は捨て去る必要があるだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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