コラム

脱炭素、実は「技術」で出遅れている日本に逆転策はあるか

2020年12月23日(水)18時03分

日本で原発をフルに再稼働させても最大でも総発電量の約3割にしかならず、再生可能エネルギーへの移行や産業部門全体での排出削減が実現できなければ目標達成は不可能である。

菅政権は洋上風力発電を大量に建設する方針とされ、関連業界は色めき立っている。だが冒頭でも述べたように日本の環境技術は大幅に出遅れており、今後、大量に建設される風力・太陽光発電所の基幹部品は、多くを輸入に頼らざるを得ないと考えられる。

再生可能エネルギーへのシフトで日本の製造業が潤う可能性が低いことを考えると、むしろ日本は脱炭素シフトを契機として、製造業立国から消費立国へと価値観を転換したほうがよいだろう。特定の技術分野を支援する従来型の産業政策(いわゆるターゲティング・ポリシー)ではなく、必要な技術は国産にこだわらず採用し、社会全体として脱炭素が進むようマクロ的な制度設計を行ったほうがよい。

脱炭素が社会全体で進めば、家屋の高断熱化や自動車のEV(電気自動車)化、社会のIT化が全てセットになるので、多くの新サービスを創出でき、結果として消費拡大にもつながるはずだ。

<本誌2020年12月29日/1月5日号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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