コラム

タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は?

2021年08月30日(月)19時40分

米メディアによると、米財務省が停止を働きかけていたという。米議会でテロリストを支援したタリバンへの反発が根強く、多数の議員が支援停止をイエレン財務長官に求める連名書簡を送っていた、との報道がある

止まるかもしれない国際援助

三つ目は、国際援助である。

前述したように、国際援助は、同国の国内総生産の42%を占めている

これは停止はしているが、まだ中止と決まったわけではない。援助している欧米諸国の立場は、曖昧になっている。今年4億3000万ユーロ(約553億円)を支払う予定だったドイツは、援助の停止を発表した。

どのみち、タリバンにとっては、枯渇しそうな大きな資金源である。

シンクタンク、Chatham Houseのアナリスト、ファルザナ・シェイク氏は「国際援助は、国際社会がタリバンに対抗できる最後の手段です」と言う。このお金が、タリバンの強要を制限しようとする圧力の手段になるのは、明らかである。

アメリカのブリンケン国務長官は、8月15日(日)に早くも「アフガニスタン国民の基本的な権利を尊重しなかったり、再びテロリストの支援や受け入れをするようになったら、制裁は解除されず、(タリバンは)渡航することができなくなるだろう」と述べた。

では、国家の財源はあるのか

それでは、新しい政権を担うタリバンが、独自に入手できる国家の財源はあるのだろうか。

まずは、国民からとる税金である。

アフガニスタンには、収穫物の10分の1の税である「oshr」というものが、何世紀も前からある。

また、可処分所得の2.5%が、宗教税である「zakat」として、貧しい人々のために徴収される。ただ、徴収は低迷したままであることが多い。

次に、資源への課税である。

『フィナンシャル・タイムズ』の報道によると、違法な採掘や輸入燃料への課税も、資金源となっている。Alcis consultancyの調査によると、イランから輸入した燃料に対するタリバンの収入は、昨年は3000万ドル(約33億円)にも上った。

加えて、ロンドンのシンクタンク・ODIの調査によると、パキスタンとイランの国境に接する南西部のニムローズ州では、自動車やタバコなどの輸送物資に対する課税が、タリバンの収入の80%を占めている。

そして、麻薬の取引である。

2001年の米国主導の侵攻以降、麻薬対策に約90億ドル(約9900億円)が投入されたにもかかわらず、依然としてアフガニスタンは世界最大のアヘン生産国である。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラの「ギガキャスト」計画後退、事業環境の逆風反

ワールド

ロシア、ウクライナで化学兵器使用 禁止条約に違反=

ビジネス

ドル一時153円まで4円超下落、再び介入観測 日本

ワールド

米、新たな対ロシア制裁発表 中国企業を狙い撃ち
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story