コラム

北京五輪のアプリに、個人情報漏洩、検閲キーワードなど、深刻な問題が見つかった

2022年01月19日(水)15時15分

3.検閲用のキーワードの存在

アプリには検閲用のキーワードリストが含まれており、新疆ウイグル自治区やチベットなどの問題や中国政府機関など、さまざまな言葉が対象となっていた。調査時点ではキーワードリストは利用されていなかったが、その理由は不明だった。

中国製アプリでは、こうした検閲用のキーワードが登録されており、チャットなどで使用できなくなっていることはよくあるという。シチズンラボはキーワードのリストをGitHubで公開しており、誰でも見ることができる。これを見るとなにを気にしているのがよくわかる。

ichida20220119bb.jpg

GitHubに公開されたキーワードリストの一部

4.ガイドライン違反、法令違反

これらの問題は、アンドロイドやiOSのアプリストアのガイドラインに違反しており、中国の法律にも違反している可能性があった。そのため、修正しないとガイドライン違反でアプリストアから削除されるなどの問題が起こる危険があるので、修正される可能性が高い。

中国には自分のスマホを持ち込まないよう

すでに中国での監視活動に対する注意喚起がアメリカを始めとする各国で行われている。アメリカのオリンピック・パラリンピック委員会のアドバイザリーは、「すべての機器が監視されると考えるべきである」とし、「データの安全性やプライバシー保護はない」と語っている

また、多くの国が選手たちに中国には自分のスマホを持ち込まず、臨時のスマホを用意することも勧めているという。今回のシチズンラボのレポートはこうした懸念が現実におきていることを示したと言える。

シチズンラボは過去にはZOOMの内容が中国に漏れて、検閲されている可能性を指摘したこともあり、こうした問題が中国のアプリで起こるのは驚くには当たらないとしている。なお、実際にZOOMの内容が検閲されていたことはその後明らかになり、中国から指示を受けていた関係者が訴追された。オリンピックは政治的イベントである。このアプリに限らず、さまざまな問題が噴出する可能性がある。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)など著作多数。X(旧ツイッター)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=

ビジネス

ユーロ圏の銀行融資低迷、インフレ期待低下 利下げの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story