ニュース速報
ワールド

米商務省がベトナムの「市場経済国」認定巡り公聴会 賛否両論

2024年05月09日(木)13時55分

米商務省が8日に開いたベトナムの「市場経済国」認定の是非を巡る公聴会で、専門家や産業界の代表者らが意見を表明した。賛成派はベトナムが認定基準を満たしていると主張したが、反対派からはベトナムと中国の経済関係の深さを懸念し、米国に悪影響が及ぶとの見方などが出ている。写真は会談するボー・バン・トゥオン国家主席(右)とバイデン米大統領。2023年9月、ハノイで撮影(2024年 ロイター/Evelyn Hockstein)

David Lawder David Brunnstrom

[ワシントン 8日 ロイター] - 米商務省が8日に開いたベトナムの「市場経済国」認定の是非を巡る公聴会で、専門家や産業界の代表者らが意見を表明した。賛成派はベトナムが認定基準を満たしていると主張したが、反対派からはベトナムと中国の経済関係の深さを懸念し、米国に悪影響が及ぶとの見方などが出ている。

現在米国が「非市場経済国」としているのはベトナムのほか、中国やロシア、北朝鮮など12カ国。商務省は、当該国の通貨が交換可能かどうかや外国企業による投資に門戸が開かれているか、政府が資源配分をどの程度管理しているか、労働者の権利が守られているかなど6つの要素を基準にして、市場経済国とするかどうか判断する。

ベトナムの扱いについては商務省が7月26日に決定を下すのを前に、公聴会が開催された。

バイデン大統領はベトナムとの関係緊密化を目指しており、昨年のハノイ訪問時には両国の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げ。ベトナム側も最近の経済改革推進を理由として、非市場経済国としての扱いをやめるよう訴えている。

こうした中で公聴会のベトナム産業貿易省の代理人として出席したエリック・エマーソン氏は、商務省の6つの基準を十分にクリアしていると述べ、市場経済国に認定するべきだと提言。具体的には国営企業への政府支援の度合いはインドよりも小さく、投資の門戸はインドネシアやカナダ、フィリピンよりも広いと説明した。

サムスン電子の米公共政策責任者スコット・トンプソン氏は「ベトナムは米国にとって安定的で安心なサプライチェーンのパートナーとなっており、米経済に究極的なメリットをもたらす」と述べた。

一方で鉄鋼業界代表のジェフリー・ゲリッシュ氏は、ベトナムを市場経済国に認定すれば同国から不公正な貿易による輸入品が米国に溢れかえると指摘し、中国が米国の高額な関税を逃れる足場になりかねないと警告。「中国の影響力を抑えるどころか、中国と中国の利益に役立つだけになる」と付け加えた。

人権団体からは、ベトナムは市場経済国認定に必要な労働者の基本的権利が保障されていないとの批判も聞かれた。

商務省の決定で焦点となるのは、非市場経済国としてベトナムに適用している高率の反ダンピング税を継続するのかどうかだ。現在ベトナム製の冷凍エビの税率は25.76%だが、市場経済国であるタイの同製品は5.34%に過ぎない。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランのライシ大統領と外相が死亡と当局者、ヘリ墜落

ワールド

頼清徳氏、台湾新総統に就任 中国メディアは「挑発的

ワールド

ニューカレドニアの観光客救出、豪・NZが輸送機派遣

ワールド

イランのライシ大統領、生存は絶望的に 墜落ヘリ残骸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中