コラム

日本不買運動で韓国人が改めて思い知らされること

2019年12月20日(金)12時00分

今年8月13日の朝鮮日報には国内旅行でぼったくりと不親切を経験した韓国人観光客の「日本旅行より国内旅行の方が嫌いになりそう」「国内旅行へ行くお金があったら代わりに海外へ行く」という不満の声が紹介された。彼らの心の中には比較対象としての日本があり、改めて自分たちが旅行先として日本を選んでいた理由を思い知らされたに違いない。

今は反日感情という「アンリーズナブル」な理由で日本という選択肢が自己規制されているが、自分たちが日本を選択していたのは単なる日本マニアだからではなく、「価性比」という冷静でリーズナブルな判断だったことを韓国内の旅行を通して気付かされただろう。

日本の文房具を捨てるパフォーマンスを披露した高校生たちも同じだ。韓国で日本製筆記用品は大きな人気を博していたが、反日感情と社会的な空気の影響で自粛を余儀なくされているのが現状だ。学生たちは日本製ペンの代わりに韓国製ペンを使いながら、忘れていた品質の「差」を改めて感じているだろう。そして自分たちの合理的な判断による選択が社会的な雰囲気によって封印されているという理不尽さにもやがて気付くだろう。

日本製でも価性比が低い商品は人気がなかった

日本製だからといって全ての商品が韓国で人気を得たわけではない。日本製でも価性比が低い商品、例えばスマホの場合は日本不買運動以前にも全く人気がなかった。それは愛国心とか反日感情とは関係がなかった。ただ、同じ性能なら韓国製より価格が高く、同じ価格なら韓国製より性能が低いという判断によるものだった。

しかし、韓国の消費者が日本のビール、日本旅行の代わりに今選択しているのは満足度や価性比が低いものだ。今は「愛国心」という名分で不便を甘んじて受け入れているが、韓国の消費者が最終的に感じるのは愛国心とか反日感情ではなく自分たちが自由に選んでいたリーズナブルな選択肢に対する「懐かしさ」になるかもしれない。

プロフィール

崔碩栄(チェ・ソギョン)

1972年韓国ソウル生まれソウル育ち。1999年渡日。関東の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。日韓関係について寄稿、著述活動中。著書に『韓国「反日フェイク」の病理学』(小学館新書)『韓国人が書いた 韓国が「反日国家」である本当の理由』(彩図社刊)等がある。

今、あなたにオススメ

キーワード

ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story