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最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性

山本彌生|アメリカ

【最新予測】2024年に迫る⁉ ポートランド市場の3つのポイント。物価高の先読みに迫る!

Photo | T‐Portland

コロナの爪痕を引きずりながら、日々踏ん張り続けていく。そんな体感の2023年。

物価高、光熱費上昇、中東やウクライナ情勢。そして、来年11月に控えた米大統領選挙など、不確定要素が多い中で生き抜く日々だったように感じます。

そんな中で、西海岸の中規模サイズの町、ポートランドではどんな暮らしが繰り広げられていたのでしょうか。

そして、気になるのは迫る2024年。物価の動向や住宅市場のインフレの影響といった、新年に向けて注目すべきポイントを3つピックアップしました。

未知なる年に向け、ポートランド市場がどのような展開を見せるのか、その可能性を探ります。

年末恒例、締めくくりの特別レポートです。

|まずは、ざっくり「商業不動産」の今・・・から

ポートランドの商業不動産・オフィス市場が、歴史的な最高値の空室率に達しました。これは、コロナ後の新しい働き方の影響と言われています。

この変化は、新しいオフィスを求めるテナントにとっては有利な時期。市場では空室率や賃料の引き下げが進んでいます。

しかし、コロナ後、多くの企業はオフィス利用の方向や方法を見直している最中でもあります。これは世界中で共通の傾向です。

米国の経済アナリストは、これを『商業不動産市場の変革期』と見ており、オフィス空室率の上昇は景気後退を示すものではないと分析。むしろ、新たな変革期の一環と捉えています。

一方で、人々の暮らしや住宅・不動産事情はどうなっているのでしょうか。2023年のポートランドのリアルをすこし覗いてみましょう。

Portland_DownTown.jpg
Photo | PDX Coordinator,LLC_Yayoi Yamamoto

|高騰する生活コスト!家計を支えるための模索とは?

最近、経済的なプレッシャーを感じている。そう感じるのは、あなただけではありません。

生活費の急上昇によって、さらなる郊外への転居を検討する市民が増えているのです。もちろん、このポートランドでもその傾向が顕著に見られます。

高い不動産価格や賃貸家賃。さらに、ここにきて高騰を続ける食費。一般的な物価全体の上昇も相まって、生活はますます難しくなる一方。

ポートランドの生活に関して、マサチューセッツ工科大学(MIT)の生計計算データから見える現実はこんな感じです。

大人2人+子供2人がある程度快適に生活するためには、$110,000ドル(約1,562万円)が必要!これは米国内の基準でいうと、高所得層地域に分類されます。

さらには、ポートランド市政府の2022年の家庭収入中央値である、90,000ドルをはるかに上回っている数字です。別の表現で言うと、ポートランドの家庭の半数以上が、この地で生計を立てるのに十分な収入を得ていない状況というわけです。

*1ドル142円換算 

ポートランドの住宅市場は、家賃や住宅ローン、光熱費などの住居関連の経費が高騰し、多くの家族が経済的なプレッシャーに苦しんでいます。

事実、この物価上昇の影響で、全米の各地やポートランドでは、多くの人が毎月ギリギリの生活を余儀なくされ。中には、毎月赤字家計を抱える人々も急増加しています。

ケース1:非正規雇用 | ダブルワーク | シングル

収入のほとんどを低家賃アパートの家賃に費やす。より安い場所に引っ越しをしたいと思っても、希望家賃枠の物件は皆無。当然、緊急時の蓄え、その他余裕は一切なし。ダブルワークをするしか生活を保持できない状態。ポートランドのコミュニティーを愛しているので、何とかこの地域での生活を続行させたいとジレンマを抱える。

ケース2:フルタイム | シングルマザー

食費、遠方の故郷に戻る頻度を急減して、出費を削る日々。最大のコストは子供の託児所代。フルタイム勤務のため、私立の託児所兼保育園が唯一の選択肢。その費用が最大の出費。フルをやめて託児所費をセーブするか、フル+パートのダブル勤務にするか悩んでいる最中。これ以上、気力体力が持つかも心配。今住んでいる町から、さらに郊外に移ることを検討中。

ケース3:カップル(子供1人)| ダブル収入

中小企業(ポートランドに多い)に勤務。35年ローンで郊外に小さな家を購入。移動手段必需品の車(ローン)2台保有。コロナ前から二人の収入額の変化なし。物価・光熱費の値上がり、保育士(人手)不足による園代の高騰。勤務先の人手不足により仕事量が倍増(給料はほぼ横ばい)。夜のコールセンターのダブルワークを思案中。家計の自転車操業に不安を抱える。

ポートランドの生活費の課題は、現在の米国の複雑な問題が絡み合ったものと言えます。横行するインフレ、停滞する賃金、高額な保育制度が、多くの家庭にとって経済的なハードルとなっています。

さらに、賃貸の負担が家族に悪影響を及ぼし、ダブルワークなどで働きながらも経済的に厳しい状況に立たされる人が増加しています。この状況は、まさに日本と共通の課題ではないでしょうか。

ただし、一方で異なる側面も存在します。それは、生活保護以外にも公的な支援手段が多岐にわたる点です。

|行政の支援体制~見えない課題とは?

低所得者向けアパート、食料品援助、フードクーポン、保育園補助、放課後支援プログラム、医療用中毒予防など。多岐にわたる支援プログラムが用意されています。

日本に比べると、雲泥の差!と思われる方も多いかと思います。

しかし、これらの一般的な支援を受けるためには、まず自身の基本収入が確保されていることが必須条件となります。

さらに、援助を受けるためには、膨大な時間と労力が必要となり、申し込みが通ったとしても数週間から数か月かかることが一般的。

当然のことながら、自身の収入を増やすことが理想です。でも、その実現には限られた時間と体力が壁に。貧困と健康の問題から、保険制度への課題が浮き彫りになり。その結果、国への負担も増加しています。

この困難な現状を考えると、地元や国の支援システムの必要性と同時に、より包括的な解決策が求められているのではないかと感じるのです。

これらのケースを読んでみて、あなたもまた、この町の住人と同じ感情を抱く瞬間があるのかもしれません。

次ページ 2024年3つの市場ポイント!  さらに、プロが明かすインフレと物価の動向とは?

1. Cydelle reviewing documents with client 2. Cydelle Higa-Johnston _ Realtor, Windermere Realty Trust.jpgPhoto | Cydelle Higa-Johnston Realtor, Windermere Realty Trust

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著者プロフィール
山本彌生

企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。

Facebook:Yayoi O. Yamamoto

Instagram:PDX_Coordinator

協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)

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