最新記事

海外ドラマ

「生まれ変われるなら、精神科医に」遅咲きのヒロイン、レイ・シーホーンの素顔

Better Call Kim

2019年04月03日(水)18時15分
メアリー・ケイ・シリング

仕事の鬼のようなキムだが、口先だけのダメ男ジミーをけなげに支える情愛深い一面も NICOLE WILDERーAMCーSONY PICTURES TELEVISION

<「業界きってのポーカーフェース」と大物プロデューサーが折り紙を付けたレイ・シーホーンの大人の魅力>

ケーブルテレビのAMCで放映され、話題をさらった連続ドラマ『ブレイキング・バッド』。そのスピンオフ作品で、悪徳弁護士ソウル・グッドマンの前日譚が『ベター・コール・ソウル』だ。そのパイロット版で、レイ・シーホーンのせりふはわずか2行しかなかった。

彼女が最初に登場する場面は、法律事務所ハムリン・ハムリン&マッギル(HHM)の会議室。ボブ・オデンカーク演じるジミー・マッギル(ソウル・グッドマンはこの時点では本名のジミー・マッギルで活動している)が勢い込んで入ってくると、映画『ネットワーク』でネッド・ベイティが言った有名なせりふを叫ぶ。「きみらは原初的な自然の力を妨害する気か。許さんぞ!」

シーホーン演じる弁護士のキム・ウェクスラーは一言も発せず、ただあきれ顔でジミーを見るだけ。視聴者がかろうじて彼女の存在に目を留めるのはその場の紅一点だからにすぎない。

会議は決裂し、駐車場に下りたジミーは怒りに任せてゴミ缶を蹴飛ばす。カメラは駐車場の壁にもたれているキムの顔にパン。ジミーは彼女に近寄り、彼女がくわえているたばこを取り上げて一服吸うと、また彼女の口に戻し、仲介役になって話をまとめてほしいと頼む。

「それは無理よ、ジミー」。彼女は冷たく言うと、たばこを投げ捨ててエレベーターに向かう。ついでに転がったゴミ缶を立ててふたをする。

そう、これが回を重ねるうちにじんわり効いてくるこのドラマのマジックだ。ジミーは何とも憎めないダメ男。キムは彼が起こすトラブルの後始末を淡々とこなすクールな相棒だ。

素顔は気さくでオープン

シーズン1、そして2の途中まで、キムはジミーの暴走を抑える良識派の相棒とみられていた。だがその後の展開で、彼女もなかなか食えない女だと分かってくる。

「時にはジミーと共犯関係にもなる」と、番組プロデューサーのピーター・グールドは言う。

「彼女を良識派と呼ぶのはちょっと違うと思う」

共同プロデューサーで、『ブレイキング・バッド』の生みの親でもあるビンス・ギリガンは初めてパイロット版を見たとき、シーホーンの演技に舌を巻いたという。一つ一つの場面にほんの少しだけ陰影を与えるしぐさや表情が心憎い。グールドに言わせると、シーホーンの強みは「業界きってのポーカーフェース」だ。

【参考記事】父親からトランスジェンダーだと告白されたら......『トランスペアレント』の真実

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 2

    「高慢な態度に失望」...エリザベス女王とヘンリー王…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 1

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 2

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 3

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 4

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:インドのヒント

特集:インドのヒント

2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり