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最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性

山本彌生|アメリカ

移民から裁判官へ、ポートランドでは裁くだけが仕事じゃない⁉

chanpone Oregonian.jpgPhoto | Coutesy Multnomah County Courthouse

| 弱者の声を拾い上げる、だけで終わりにしない。必要なのは、その先の実践

「裁判官は、一度任命されればそれで安泰というものでは無いのよ~。」シャンポーンさんは、そう笑って話します。特に、今必要とされるのが、多様性・公平性・包摂性についての見識、経験、改革です。

「実は今、他の裁判官と共に多様・公平性特別委員会に参加しているんです。 ここを足掛かりに『司法制度を改善する方法について考え、実現をしたい』という目的が明確にあります。制度が機能しているかを調べて、改善すべき点があれば変えていく。時代や文化が変われば、制度も変わるべきだからです。これは、一般企業や行政でも同じことです。

今さらに、異なる生活・文化経験や視野を持つ多様な弁護士や裁判官の存在が、多くの地域には重要であると言います。

脆弱なコミュニティー、貧困層、DV、抜け出せない環境、偏見。複雑な生い立ちを持つ犯罪者や予備軍。そして被害者は、法制度や公的人間を信頼することが難しいのが現実だからです。

「裁判所は、正しい情報を提供する。同時に、人の権利、保護。そして、そのための手段を理解してもらう出発点です。麻薬、殺人、売春、詐欺、金銭トラブル、離婚(又は結婚)、どれひとつ同じ内容はありません。生身の人間の様々な人生があります。

裁判所には、多くの社会的弱者、マイノリティー、言語や知識においてマイナスポイントを持つ人。幾重ものハンディを抱えた人が多く来ます。

ポートランドの公的『場』として裁判所に来る人の多くは、人間として最低限の自分の権利を守るための指導と助けを必要としているんです。 」

日本でもアメリカでも、一般に社会的弱者は、自ら声をあげることに躊躇しがちです。公的機関は、弱者の声を拾い上げることは当然のこと。日米問わず、多くの人はそう言います。でも実際の所、彼らの声を拾い上げデータ化して、仕事を終わりにさせてはいませんか。その細い声を基に、調査をして計画を立てて地域という場に反映させる。時間と労力は掛かりますが、必要な務めだと感じます。

IMG_9032.JPG訪日カンファレンス以外にも、在ポートランド領事館主催のイベント等でスピーチをする機会も数多く。米国連邦政府支長、州法務長官、州ビジネス局長という Like-minded People の仲間と定期的に意見交換をし、お互いを助け合う時間は至福の大切な時間です。(2019年撮影)Photo | PDXCOORDINATOR,LLC

|  いかに生きていくのか、問いかけてみよう...

熱く大きく語る、牡丹の花のようなシャンポーンさん。実は、2017年に外務省から選ばれて、訪日をしています。その際、筆者が州政府と協働で行った「ウーマン・リーダーシップ」カンファレンスに、ブラウン州知事と一緒に登壇をしてもらいました。

その際、多くの日本人女性や行政の人々と交流して驚いたことがあったと言います。

「先進国というイメージを持っていた日本。でも、政府内、一般企業での高い地位に女性が少ないということに驚きました。そして 文化的背景や組織、環境という絡まった理由から、多くの重荷を背負っている女性が多いこと。 先進国に住みながら、自由があるようで無い。そう感じたのです。」

非正規雇用者数と完全失業者が、年々増え続ける今の日本社会。特に、女性の自殺率が増え続けているという悲しい現実もあります。

言うのは簡単だけれども。そう前置きを言いつつ、シャンポーンさんはこう続けます。

「男女問わず、今の自分のポジションから脱する方法の一つ。それは、新しい情報や学びを取り入れること。そして、自分の付加価値を上げていくのです。地域行政が支援ツールを提供しているのであれば、是非使うべきです。あなたには、公的(学習)支援を受ける権利があるのですから!恥ずかしい事など何もありません。勇気をもって、問い合わせることから始めてみてはどうでしょうか。」

貧しい人、収入が低い人、そして女性にとって、教育は必ずしも自由に与えられてきたわけではありません。 歴史上、教育や学習能力は、金持ちの特権と見なされてきました。そして、今さらに 裕福な家の人ばかりが、安心して高等教育を受けられるような社会になっています。

昭和の時代に流された多くの『無知の涙』。著者 永山則夫の生きた当時の貧困、読み書きができないレベルの初頭教育の欠如とは違います。

とはいえ、別の意味での社会的弱者が多く生まれている今。その国・地域の教育と学習の低下は、成長と繁栄を緩やかに、でも確実に逆行させる大きな要因となる。このことは、すでに知られているところですよね。

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Profile

著者プロフィール
山本彌生

企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。

Facebook:Yayoi O. Yamamoto

Instagram:PDX_Coordinator

協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)

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