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ヴィズマーラ恵子|イタリア

イタリアで横行している偽オリーブオイルは詐欺師の新ビジネス

画像: LADO

昨今、EUでは干ばつと低収量によりエキストラバージンオリーブオイルの価格が高騰し、製品の偽造行為が活発化している。

2024年1月3日、イタリア・ローマで、「偽エキストラバージンオイルを押収、レストラン50軒を摘発した」と、ひまわり油をエキストラバージンオイルと偽装して販売されていた事件が報じられた。

検察庁と食品安全行政・保健省NAS(Nuclei Antisofisticazione e Sanità) 保健・衛生措置の監視や衛生検査をする保健カラビニエーリ司令部による捜査により、液体の色を変えるクロロフィルで着色されて緑の色合いを加え、カロテノイドで黄色味の特徴も加え、風味を変えるβカロテンとクロロフィルを混合した種子油であったが、エキストラバージンオリーブオイルとして流通し、ローマのレストランで販売されていた事が発覚した。

ローマのレストランには、オリーブオイルの主要生産地域の一つであるプーリア州に拠点を置く秘密の生産者が供給していた。

ラ・レップブリカ・ローマ版のジュゼッペ・スカルパ氏の記事によると、秘密生産者についての告発を受け、追跡調査から始まったという。

想定される犯罪は、食品の偽造と盗品の受け取り容疑で、ローマの検察庁とカラビニエーリNASの副検事ジョバンニ・コンツォ氏は、ほぼ1年間捜査を続けてきた。

プーリア州の秘密生産者のサプライチェーンを追跡する事で、ローマのレストラン経営者など、顧客の一部を特定することができた。
この偽エキストラバージンオイル商品は、バンでレストランの入り口前に届けられた。

エキストラバージンオリーブオイルの平均価格は、1リットル9ユーロ(約1,450円)であるのに対し、本物のエキストラバージンオリーブオイルと見分けがつかないニセモノのオリーブオイルは、1リットルあたり3ユーロ(約480円)で、全て格安特価のセールで販売されていた。


| スペインでも偽エキストラバージンオリーブオイル事件

スペインではランプ油をエキストラバージンオリーブオイルとして偽装したものが流通していた事件があった。

昨年11月、スペインでは民間警備隊により、シウダー・レアル近郊の地域で大規模捜査が実行され、不適切な混ぜ物が含まれた消費に適さない26万リットル以上のオリーブオイルと車両4台と現金9万1000ユーロ(約1,470万円)に加え、請求書や電子メールなどのデジタル証拠も押収され、11人が逮捕された。

成分表示ラベルは犯行グループにより偽造されており、表記されているものとは異なるもので、ランプ油は、製品を薄めるために使われていた。

このタイプの油は、歴史的に燃料として使用されてきたもので、酸性度が高いのが特徴で、過度の酸味と不快な臭気がする。
詐欺グループは、それを食用として販売することを目的としていた。

同じ作戦の一環として、イタリアでも保健カラビニエーリNASが、イタリアのシチリア州とトスカーナ州で捜査が開始されたのだ。

捜査当局は、違法行為に関与した疑いのある3社の製油工場に立ち入り、オリーブオイルを検査した。
この調査中に、種子油を使用した偽エキストラバージンオイルが販売されたことが明らかになった。

見た目だけでは、購入前に内容物が本物か偽物かを判別する事はかなり困難である。
消費者を欺くために着色料で色を変え、風味の点でも、信頼性を高めるためにオリーブとピーナッツ、ヒマワリ、トウモロコシなどの種子の混合物で作られていた。
一部の国では、これらのブレンドは合法だが、イタリアでは違法である。
オリーブオイルの量を明確に表示する必要があり、いずれの場合も「オリーブオイル」という言葉を表記してはならず、商品ラベルには使用してはいけない。
実際は、異物が混入された危険で悪質な製品であり低品質な偽物。

しかし、製油所がイタリアでない海外であったとしても、それを責める事はできない。
本物そっくりに作る卓越性に加えて、詐欺も含め全てが「Made in Italy」となるからだ。


欧州で食品における油の偽造工作は、最近始まった真新しい手法ではない。
しかし、さまざまな要因が重なって、ここ数ヶ月で明らかに増加しているという。

インフレに加え、地方では地中海全体に被害を及ぼした夏の大干ばつの影響もあり、オリーブオイルの生産量が20〜30%減少した。

その一方、動物性脂肪よりもオリーブオイルを好む新しい食品トレンドにより、需要がますます増加しているため、顧客を騙そうとするメーカーにとっては、理想的な状況が生まれた。
こうして、偽オリーブオイルが詐欺師の肥沃な土壌となった。

持続不可能な価格によって、オリーブオイルと低品質の代替え品を混合する手法の違法行為がなされた事は、消費者の信頼を損なうだけでなく、公衆衛星へのリスクももたらしたことになる。

| 本物のオリーブオイルを見分けるにはどうすればよいか?

消費者には、オリーブオイルの信頼性を確認する方法がいくつかある。


商品の品質は、収穫の日付と場所を確認すると良い。
一部のラベルには、生産チェーンを追跡できる QR コードが付いている。
他の場合には、外部の認証機関またはコンソーシアム (たとえば、PDOまたはPGI 製品を扱う機関) によってシールが貼られている場合もある。

現在、オリーブオイルコンソーシアムは、要件定義と成果物をツール上で関連付けするトレーサビリティ管理ツールを活用しているので、オリーブオイルの輸送全体の追跡可能性を保証するブロックチェーンシステムでチェックできる。
(※ ただし、コントロールが欠落していることもよくある)

そして、確認するべきは、なんといっても「商品価格」である。

オリーブオイルはここ数年で、1リットル当たり3~5ユーロ(約430円〜800円)程度だったものが、現在は10~12ユーロ(約1610円から1930円)ほどに値上がりしている。
1リットルで5ユーロ(800円)以下など、イタリアではあり得ない価格であり、あまりに低価格である場合は、すでに偽オリーブオイルだと疑って間違いない。

激安価格なのに高品質のエキストラバージンオイルであるとは到底信じ難い。

地中海ダイエットの優れた植物性脂肪を使った食品詐欺はますます頻繁になっており、消費者は警察のチェックに加えて、詐欺に遭わないよう買い物の際には、もっと注意を払う必要がある。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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