アステイオン

音楽史

日本の学校教育では、明治時代から「ハモり」を教えるようになった...「和声学」を紐解く

2023年12月20日(水)11時00分
仲辻真帆(東京藝術大学未来創造継承センター大学史史料室学術研究員)

以上の譜例には、いずれも和声学上の「間違い」はない。しかし、体系化された和声理論においては、「間違い」とされる和音の使い方や配置がある。

例えば4声のうち、ある2声が完全5度・8度の音程で並行することは避けなければならない「禁則」とされている。

各声部の動き、各和音の響き、調性の変化、そして禁則にも配慮しながら和声を検討するためには、理論への習熟だけでなく美的感覚が必要となる。音楽の「調和」という深遠なる世界には、和声学を通して分け入ることができるのだ。

近現代日本音楽史を考える

明治10年代から学校教育で西洋音楽理論がとりいれられていたことはすでに述べたが、その背景には、明治期の国策がある。当時新たな概念として提示された「音楽」は、国家・国民形成に深く関与している。

小中学校時代の音楽の授業が苦手だった、という声をよくきく。そのルーツとなる近代日本の音楽文化史は、批判的に考察されてこそ今日的意義を持ち得るのではないだろうか。


仲辻真帆(Maho Nakatsuji)
1988年、奈良県出身。県立奈良高校を経て2018年、東京藝術大学大学院修了。博士(音楽学)。東京藝術大学、静岡大学ほか非常勤講師。東京藝術大学未来創造継承センター大学史史料室学術研究員。東洋音楽学会、日本音楽学会、日本音楽教育学会ほか会員。「近代日本における西洋音楽理論受容の歴史的研究:東京音楽学校の作曲教育を軸として」にて、サントリー文化財団2021年度「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」に採択。


※本記事の元論考「近代日本における西洋音楽教育の歴史的展開――「音階」「和声」概念の受容過程」は 『アステイオン』99号に所収されています。

71wJUyHlFQL._SL1500_20231112.jpg


アステイオン』99号
 特集:境界を往還する芸術家たち
 公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
 CCCメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

PAGE TOP